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酒楽考

Category : 酒は心 《酒楽考》
(株)辻善兵衛商店 桜川

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真岡市田町1041-1 
電話0285-82-2059 
ファクス0285-83-1170
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29歳杜氏が醸す芸術品

 創業1754年、県内でも老舗の酒蔵。県内屈指の歴史を誇る酒蔵、(株)辻善兵衛商店(辻達男社長、従業員6人)。杜氏を務めるのは、同社専務でもある辻寛之さん(29歳)=写真上=。
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 酒造りを始めて10年と浅いが、23歳のとき、関東甲信越国税局酒類鑑評会で優秀賞を受賞。若い下野杜氏誕生に業界が沸いた。
 「茨城に優れた技術を持つ酒造会社があるから修行に行きなさいと、父に言われ『物は試し』で蔵元の門を叩き2年間下積みをしました。米を原料に、これだけフルーティーで味わい深いものができることに衝撃を受けました」という寛之さん。酒に魅せられ社に戻り研鑽を重ね、日本酒の芸術品とも言われる大吟醸で受賞した。
 同じ材料で同じ造りをしても、毎年気候も違えば米の出来も違う。全く同じ味を醸すには、杜氏の経験や技術が物を言う。「まだ経験も浅いので、佐野の第一酒造さんや周辺の方々に教えていただいています」と、自ら酒米研究会に所属したり研鑽を重ねる日々だ。
 「力を注いで造っているのは食中酒です」という寛之さん。この6月上旬に新酒「辻善兵衛純米大吟醸」を発売した。落ち着きのある上質な香りと、米の旨味を最大限生かした造り。熟成が進み最高の状態になるのは秋ごろという。
 同社には、出稼ぎの蔵人はいない。地元の米、地元の水、地元の技術者を育てている.酒米も自家精米。年間生産量は、一升瓶に換算して約5万本。小規模蔵元だからできる丁寧な造りを心がけている。
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■辻善兵衛・純米吟醸生 フレッシュでフルーティー。リンゴやパイナップルに似た吟醸香が特徴で、若い人を意識した造り。和食、刺身、白身魚、湯葉などに合う ▽杜氏名…辻寛之▽原料米…栃木県産五百万石▽精米歩合…53%▽仕込み水…鬼怒川の伏流水(軟水)▽使用酵母…栃木T1▽アルコール度数…15.9%▽日本酒度…+2▽酸度…1.7▽アミノ酸度…1.4
■辻善兵衛・純米大吟醸 落ち着きのある上質な香りと米の旨味を表現。和食全般。あっさりした料理などに合う ▽杜氏名…辻寛之?原料米…山田錦▽精米歩合…50%▽仕込み水…鬼怒川の伏流水(軟水)▽使用酵母…熊本9号▽アルコール度数…17.5%▽日本酒度…+5▽酸度…1.7▽アミノ酸度…1.1
■桜川普通酒 100年近く続く定番の味はしっかりした旨味があり、ぬる燗、熱燗でどうぞ。和食全般のほか味の濃い料理や脂っこい料理にも合う ▽杜氏名…辻寛之▽原料米…栃木県産五百万石▽精米歩合…68%▽仕込み水…鬼怒川の伏流水(軟水)▽使用酵母…協会901▽アルコール度数…15.5%▽日本酒度…+2~+3▽酸度…1.3▽アミノ酸度…1.1



【2006年6月16日とちぎ朝日掲載】










菊の里酒造(株) 大那

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大田原市片府田302-2
TEL.0287-98-3477
FAX.0287-98-3333



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究極の食中酒目指す
 
 究極の食中酒を目指す、菊の里酒造株式会社(創業1679年、阿久津克彦社長、従業員1人)。杜氏を務めるのは同社専務の阿久津信(まこと)さん(31歳)。杜氏になって2年。「思い通りの酒を1から造りたかったんです」と昨年、菊の里酒造では40年ぶりの新銘柄「大那(だいな)」を造った。
 造りを始めてからは6年になる。東京農業大学醸造科卒業後、異業種の会社に2年勤めたが、祖父の死に伴い家業を継ぐことを決意。水戸の蔵元で2年間修行を積み菊の里に戻った。
 当時同蔵は、地元でも知名度は薄く、塩原などで土産用に販売していた。信さんが戻ってから、蔵改革が始まった。酒を適温で貯蔵できる大型冷蔵庫を設置するなど、消費者の口に入るまでの貯蔵、流通にも気を配った。酒販店は信さん自らが頭を下げ回った。「顔の見える商売がしたい」という信さん、温度管理が行き届き、信頼できる酒販店と契約。現在県内の契約酒販店は40店を超えた。
 米、水、土、人、技術と地域性を大切にした、のどごしの良いすっきりした食中酒を生んだ。大那酒米研究会を発足、地元農家との意思の疎通も図っている。
 「鑑評会には出品していません。興味が無いだけです。旨い酒を造ることで、消費者とも意思の疎通が図れたらと思っています」と話す信さん。新銘柄の大那は、水も米も人もすべてが地元の「栃木の地酒」。宇都宮のある酒販店の店主は「大那は育てたい酒です」と話していた。

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 ◇取り扱い酒販店=信頼できるお店を紹介します。直接菊の里にお電話ください◇蔵元推奨のお店=俵寿司(大田原市山の手)、楽樹(栃木市大宮)、くりはし(さくら市氏家)、利衛門(足利市朝倉町)、こっこのすけ(南河内町薬師寺)、takemi(那須塩原市上厚崎)、割烹酔心(宇都宮市本町)、はな坊(宇都宮市今泉)、中国料理応竜(大田原市城山)、千石(宇都宮市宿郷)、ねぶた(小山市城東)、よかろう(大田原市浅香)◇蔵元見学=電話で予約の上訪問を4月から11月限定

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 ■大那純米吟醸 美山錦=写真右
 杜氏自らが好きな米で醸した酒▽杜氏名…阿久津信▽仕込み水…那須山系伏流水▽酒米…美山錦(長野産)▽精米歩合…55%▽使用酵母…9号系▽アルコール度数…16.8▽日本酒度+3▽酸度…1.9▽アミノ酸度…1.1▽販売期間…通年▽出荷数量…2,000本▽味覚…リンゴのような香りとともに、みずみずしくて爽快な味わいが広がる▽合う肴…料理全般だが、特に揚げ物に良い
 ■大那純米吟醸 山田錦=写真中
 今年から山田錦を蔵の裏の田で栽培を始めた▽杜氏名…阿久津信▽仕込み水…那須山系伏流水▽酒米…山田錦(自社田)▽精米歩合…55%▽使用酵母…9号系▽アルコール度数…16.8▽日本酒度+3▽酸度…1.9▽アミノ酸度…1.1▽販売期間…通年▽出荷数量…2,000本▽味覚…マスカットのような清涼感▽合う肴…料理全般だが、肉の脂にも合う
 ■大那純米吟醸 五百万石=写真左
 酒米は地元農家と契約栽培▽杜氏名…阿久津信▽仕込み水…那須山系伏流水▽酒米…五百万石(地元産)▽精米歩合…50%▽使用酵母…9号系▽アルコール度数…16.8▽日本酒度+3▽酸度…1.9▽アミノ酸度…1.1▽販売期間…通年▽出荷数量…2,000本▽味覚…フレッシュな柑橘系の香りが特徴▽合う肴…地元のアスパラ、トマト、アユや旬の素材に。 3種とも米だけを変えたもので、米の違いによる味比べが楽しい品揃え。



【2006年7月7日とちぎ朝日掲載】









(株)井上清吉商店 澤姫

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河内町白沢1901 
電話028-673-2350 
ファクス028-673-2158


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酒米はすべて県産米

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 「酒米はすべて栃木県産米を使っています」と胸を張る、井上清吉商店(明治元年創業、井上郁雄社長、従業員11人)の専務、井上裕史さん(32歳)。「栃木の地酒が有名になったとき、これが栃木の酒だと県外に持っていっても、ラベルを見ると兵庫県産山田錦の名前が入っていては、おかしいでしょう。そういうことはしたくないんです」とキッパリ言い切る。
 杜氏になって3年。日本最大の杜氏集団=岩手県・南部杜氏の資格を持つ。先代の小田中杜氏が晩年は病気がちだったことから、東京農大醸造学科卒業後、同校研究生だった裕史さんは、他社修行をしないで実家に入社した。同社に戻り小田中さんから2年間みっちり実践教育を受けた。
 3年目の初めころ、小田中さんは体調を崩し、ドクターストップが掛かった。
1週間以内に蔵入りしなければ、酒造りが間に合わない時期だった。新たに杜氏を雇う時間もなく、1年間酒造りを断念する話もあったが、「小田中さんは、責任感が強い昔の職人気質の人だったので、酒造りを止めると言おうものなら、無理してでも蔵に出てくると思いました。私にとっては『もう一人の祖父』みたいな人でしたので、私が柱になって酒造りを始めました」。裕史さん25歳の時だ。
 「杜氏が変わったら、その酒はダメだと言われる難しい時期だった」けれど、手探りで醸した酒が上出来だった。平成11年度、12年度、13年度と杜氏代行してから、全国新酒鑑評会で金賞を受賞している。「今度は、栃木県産米で受賞したい」。真・地酒宣言を県内で初めて唱えた。
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 ■澤姫・純米吟醸無濾過生原酒 夏場は特にお勧めの酒。若鮎の塩焼きなどと一緒に ▽杜氏名…井上裕史▽仕込み水…鬼怒川の伏流水▽原料米…ひとごこち▽精米歩合…50%▽使用酵母…栃木県産酵母▽アルコール度数…17.5▽日本酒度…+3▽酸度…1.5
 ■澤姫・吟醸酒 煮物などによく合う ▽杜氏名…井上裕史▽仕込み水…鬼怒川の伏流水▽原料米…ひとごこち▽精米歩合…50%▽使用酵母…栃木県産酵母▽アルコール度数…16~17▽日本酒度…+4▽酸度…1.5
 ■澤姫・大吟醸酒 刺身など淡白なものによく合う ▽杜氏名…井上裕史▽仕込み水…鬼怒川の伏流水▽原料米…ひとごこち▽精米歩合…40%▽使用酵母…栃木県産酵母▽アルコール度数…17.5▽日本酒度…+4.5▽酸度…1.45
 【蔵元推奨店】酔心、幸楽(宇都宮) 酒屋くりはし(さくら)
取り扱い酒販店は、直接蔵元に問い合わせを。

【2006年7月21日とちぎ朝日掲載】










杉田酒造(株)雄東正宗

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小山市上泉237
TEL.0285-38-0005
FAX.0285-38-2821

幻の酒米で醸す旨口

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 幻の酒米「強力」を復活させ、旨口の酒を醸す杉田酒造(創業明治9年、杉田一典社長、従業員9人)。強力米は、山田錦をしのぐ程の大粒米で、酒造家からは垂涎の的。明治時代から第2次世界大戦前後まで、鳥取県で主に作られていた品種だが、約1.5mの高さまで伸びるので倒れやすく、栽培が難しいため『幻』となっていた。
 ドラマは、「地元の酒米で粟野の地酒を造りたい」と、故湯沢隆夫町長が5粒の種モミを入手したことから始まった。有機無農薬栽培で大切に育て収穫。2年前、杉田酒造の南部杜氏・高橋善勝さん(61歳)の技で、重厚で力強く、コクのある味わいと鋭いキレ味、洗練された旨味、ほのかで凛とした涼やかな吟香の銘酒が生まれた。
 粟野の伝統行事「発光路強飯式」から名をもらい、「発光路強力(ほっこうじごうりき)純米吟醸」とし、ラベルには、収穫した強力米のワラと粟野産の大麻を漉き込んだ和紙を使っている。
 同蔵には他にも銘酒が数多くある。栃木県清酒鑑評会では、平成15年から3年連続で吟醸酒の部で受賞し、普通酒でも優秀賞に選ばれている。「鑑評会に出すのは、賞を取るのが狙いではないく、プロの助言を聞くためです。バランスや香りなど、造り手とは違ったコメントが勉強になります」という専務の杉田泰教さん(30歳)。「鑑評会でいただいたコメントは、蔵で高橋杜氏と相談、改良すべきことは速やかに実践します」。
 大手酒造メーカーの安売りの影響を受け、地方の蔵では普通酒離れが進んでいるが、「毎日呑んでも、飽きのこない晩酌酒も造り続けていきたい」という泰教さん。今は、高橋杜氏の下で腕を磨いている。「造りをさせてもらえるようになったら、全く今までに無い味を造るのではなく、杉田の味を守りながら『プラス』の酒造りをしたい。素材やデータが同じでも、造り手が変わると味も変わってしまいます。醍醐味でもあります」と若き跡継ぎは、酒造りを心から楽しんでいる。
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 ◆発光路強力(ほっこうじごうりき)純米吟醸=写真右 夏まではキレを楽しみ秋口以降は、香りとコクが楽しめる銘酒▽杜氏名…高橋善勝(岩手県南部杜氏)▽仕込み水…日光山系伏流水▽酒米…粟野産強力▽精米歩合…55%▽使用酵母…栃木県酵母▽アルコール度数…16~17度▽日本酒度…+4▽酸度…1.2▽合う肴…淡白なもの▽販売店…国道50号線沿いの思川道の駅。
 ◆雄東正宗純米吟醸=写真中 食中酒でもイケル。香りが高い割に呑みやすい▽杜氏名…高橋善勝(岩手県南部杜氏)▽仕込み水…日光山系伏流水▽酒米…麹米(兵庫県産山田錦)、掛米(栃木県産五百万石)▽精米歩合…55%▽使用酵母…栃木県酵母▽アルコール度数…16~17度▽日本酒度…+3▽酸度…1.3▽合う肴…濃い味や脂などにも合う▽販売店…国道50号線沿いの思川道の駅。
 ■雄東正宗大吟醸=写真左 吟醸香が高くフルーティーでキレがある淡麗辛口▽杜氏名…高橋善勝(岩手県南部杜氏)▽仕込み水…日光山系伏流水▽酒米…麹米、掛米とも山田錦(兵庫県産)▽精米歩合…40%▽使用酵母…栃木県酵母▽アルコール度数…15~16度▽日本酒度…+5▽酸度…1.4▽合う肴…刺身など▽販売店…国道50号線沿いの思川道の駅。蔵に電話していただければ、近くの酒販店を紹介します。



【2006年8月4日とちぎ朝日掲載】









相澤酒造(株) 愛乃澤

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佐野市堀米町3954-1 
電  話 0283-22-0423
ファクス 0283-22-0937

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3年連続県知事賞の実力派

 昭和の初め、県内の他の酒造会社に先駆けて純米酒を醸した相澤酒造株式会社(創業1854年、相澤祥子社長、従業員夏場4人、冬場8人)。杜氏を務めるのは、二女の晶子(しょうこ)さん(37歳)。
 95年、先代の社長急逝に伴い、東京の大学病院で医局秘書をしていた晶子さんが、意を決して実家に戻った。当時の杜氏・堀昭一さんの下で酒造りの基礎を学び、新潟の酒造会社で修行、下働きから杜氏見習いへと腕を磨いた。本格的に酒造りを始め5年。堀杜氏高齢のため、晶子さんが2003年から相澤酒造の杜氏として指揮を取っている。

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 杜氏になった年から、県清酒鑑評会純米の部で県知事賞を3年連続で受賞。「米の味を最大限に引き出す純米酒は、蔵の個性が出るとも言われています。先代の遺志を継ぐ意味でも、純米酒が認められたことはうれしいです。お客様に『美味しかったよ』と言われるのが一番の励みです。飲まれた方の心を和ませるような酒を醸していきたい」と晶子さん。彼女が杜氏を務めてから普通酒も改善され、糖類含有なしの本醸造と同じ造りをしている。
 昨年は、県内で女性初の酒造技能士1級も取得。杜氏となった今でも、新潟や岩手で酒造りの講習会があれば足しげく通う。「近いうちに杜氏試験にもチャレンジして、応援してくださった方々にもお礼がしたい」と話す。
 「造っている最中は無我夢中です。イメージを描き、製造計画に基づいて酒造りをしますが、計画通りにいかないときもあります。良い方にも悪い方にも裏切られます。『恐るべし日本酒』と思います」。
 華奢な体つきで男性以上の働きをする晶子さん。「健康管理が一番です。蔵入りする前に予防接種をして、外には出ないようにしています」。蔵入りは、10月の大安と決めている。

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■純米吟醸 愛の澤(オレンジラベル) 自然に立ち上がる上品な香りと繊細な味が特長 ▽杜氏名…相澤晶子▽仕込み水…秋山川伏流水(自社井戸水)▽原料米…麹米、掛米ともに兵庫県産の山田錦▽精米歩合…50%▽使用酵母…M310▽アルコール度数…15.5▽日本酒度…+2
◆純米吟醸 愛の澤原酒(赤ラベル) 通好みの純米吟醸原酒。春の搾り立て、秋の冷やおろし、季節と共に楽しめる ▽杜氏名…相澤晶子▽仕込み水…秋山川伏流水(自社井戸水)▽原料米…麹米、掛米ともに兵庫県産の山田錦?精米歩合…55%▽使用酵母…協会1401号▽アルコール度数…17.5▽日本酒度…+3
◆純米 愛の澤(緑ラベル) お米の味を生かしたすっきりとした味の純米酒。食事とともにどうぞ ▽杜氏名…相澤晶子▽仕込み水…秋山川伏流水(自社井戸水)▽原料米…麹米、掛米ともに兵庫県産の山田錦▽精米歩合…60%▽使用酵母…県酵母T-S▽アルコール度数…15.5▽日本酒度…+3

◎相澤酒造推奨のお店…月の兎・あらかわ・酔心(宇都宮)、酔魚菜(栃木)、みかく(さくら)、俵寿司(大田原)、しんたろう、網焼きだいにんぐさら(佐野)

取り扱い酒販店は、直接蔵元にたずねてください。


【2006年8月18日とちぎ朝日掲載】





飯沼銘釀(株) 杉並木

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上都賀郡西方町大字元850
TEL 0282-92-2005
FAX0282-92-8181

チームワークで酒造り

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 「チームワークでの酒造りを目指しています」と話す、飯沼銘醸株式会社(創業1811年、飯沼邦利社長、従業員夏場8人、冬場10人)の専務、徹典さん(41歳)。製造責任者として、下野杜氏メンバーの大川浩正さん(40歳)がいるが、「杜氏という造り全体の統括者は配置しません。全スタッフが、酒造りに精通したプロになってもらうために、研修に出しています」という。現在、同蔵では越後杜氏の高橋良久さんが大吟醸を造っているが、「冬場の1カ月造りの手助けをしてもらう程度です。いずれは、若い蔵人のみで造りを進めるつもりです」と話す。
 「酒造りの基本は清潔さです。雑菌を駆除しなければ、旨い酒は醸せません」と毎年、全員で3週間かけ蔵の中を徹底的に清掃する。天井や床、壁や梁はもちろんホースや器具類に至るまで行う。
 飯沼銘醸の看板酒「杉並木」の名付け親は、現社長の邦利さん。昭和50年ころ、「例幣使街道を使って日光に営業へ行くとき『コレだ』と思いました。当時はまだ、杉並木にこだわりが無かったのでしょうね。日光の2つの蔵元ですら『杉並木』の名を使った酒がありませんでしたから」という邦利さん。「杉並木銘釀に改名した方が良いくらい酒の名前が売れています」という徹典さん。
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 大学は商学部を卒業。協和発酵で2年間酒造りの修行を積み、東京のデパートで3年酒売り場を経験、販売業務に携わった。徹典さんが中心になって醸している酒は、自家田で育てる山田錦を惜しみなく削って造る「童心」。年間一升瓶に換算して1200本の限定酒だ。「周囲の農家が田んぼを貸して下されば、もっと大量に醸せるのですが」と残念そうに話す。
 「旨味はあるけど甘みがないー飯沼さんちの酒はコレだって言われるような酒を醸していきたい」という徹典さん。「酒もビールも飲みます。酒は普通酒をぬる燗でやると、量が飲めていいですよ」となかなかの酒豪らしい。


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 ■杉並木大吟醸=写真右 酒造好適米の山田錦を38%精白し、高度な伝統技術で時間をかけ丁寧に醸した、飯沼銘醸最高レベルの酒。淡麗で滑らかな口当たりとフルーティな香り ▽杜氏…高橋良久(越後杜氏)▽仕込み水…大谷川の伏流水▽原料米…掛米、麹米ともに山田錦▽精米歩合…38%▽使用酵母…M310▽日本酒度…+5▽アルコール度数…16.5▽酸度…1.2
 ■杉並木年輪 純米吟醸=写真中 お米の旨味やふくよかさが感じられるような、旨口でさわやかな味わいの飲み飽きしない逸品 ▽杜氏…高橋良久(越後杜氏)▽仕込み水…大谷川の伏流水▽原料米…掛米(五百万石)、麹米(山田錦)▽精米歩合…55%▽使用酵母…協会1401号/TーF(県酵母)▽日本酒度…+2▽アルコール度数…15.5▽酸度…1.8
 ■杉並木特別本醸造=写真左 すっきりとキレがよく、淡麗辛口の一押しの酒。冷やして常温で、ぬる燗でといろいろな楽しみ方ができる酒 ▽杜氏…高橋良久(越後杜氏)▽仕込み水…大谷川の伏流水▽原料米…掛米、麹米とも五百万石▽精米歩合…58%▽使用酵母…協会1001号/TーF(県酵母)▽日本酒度…+6▽アルコール度数…15.5▽酸度…1.3




【2006年9月1日とちぎ朝日掲載】








(株)松井酒造店 松の壽

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塩谷町大字船生3,683
TEL 0287-47-0008
FAX0287-47-0558
http://www.matsunokotobuki.jp

全国新酒鑑評会で金賞4回


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 裏庭は広大な杉林。かつて松尾芭蕉が歩いた奥の細道・日光北街道。その杉林から湧き出る水を仕込み水として使う(株)松井酒造店(創業1865年、松井達雄社長、従業員12人)。県内一軟らかいと言われる湧き水は、硬度1.0という超軟水。口当たりの良い酒が生まれる理由の一つだ。
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 「利き酒をすれば原料米、米麹、使用酵母も分かりますし、製造工程も頭に描くことができます」と話す同社専務であり製造責任者の松井宣貴(のぶたか)さん(39歳)。県酒造組合の利き酒会で優秀賞、全国利き酒会でも5本の指に入り、関東甲信越酒類鑑評会では審査委員も務める。
 東京農大醸造学科卒業後、高崎のアルコールメーカー(聖徳銘釀)で4年半修行を積んだ。2年半は、酒販店回りの営業を、後の2年は酒造りを学んだ。「労働組合にも入りました」と他の社員と分け隔てなく基礎を叩き込まれた。松井酒造に戻ってからも聖徳銘釀時代の師匠に連れられ研修を受け続けた。
 「酒造りは分析の繰り返しです。製造計画と違った味、香りになった場合、なぜこうなったのか、遡って分析しデータ化して次の造りに生かします」と勘に頼った酒造りではなく、利き酒をすることによって得られるデータを重要視した酒造りだ。「毎年同じ出来の米、酵母はありません。米の出来、不出来を見極め微調整を繰り返し、昨年と同じ味、香りを再現していきます。ただ、今年の失敗は来年の成功に繋がるよう、緻密な分析を繰り返します。そのためにも利き酒は重要です」。
 平成10年から製造責任者として酒造りを始め、蔵元としては最高の栄誉と言われる全国新酒鑑評会で金賞を6年間で4回受賞。「鑑評会に出品するのは、技術向上のためです」。他にも、関東甲信越酒類鑑評会、県清酒鑑評会吟醸の部などで10回の受賞歴がある。それでも、まだまだ完成という言葉は使えないと話す。

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 ■松の寿本醸造男の友情=写真右 香り穏やかで、すっきりとした辛口で飲み口いい本醸造。塩谷町(旧船生村)出身の作曲家・船村徹氏の直筆をラベルにしている ▽製造責任者…松井宣貴▽仕込み水…超軟水の高原山麓自家湧水▽原料米…麹米、掛米ともに五百万石▽精米歩合…60%▽使用酵母…NEWデルタ▽アルコール度数…15.5%▽日本酒度…+6.5▽酸度…1.2
 ◆松の寿大吟醸=写真中 香味のバランスが取れた雑味のない奥深い味わい ▽製造責任者…松井宣貴▽仕込み水…超軟水の高原山麓自家湧水▽原料米…麹米、掛米ともに兵庫県産山田錦▽精米歩合…38%▽使用酵母…M+T・デルタ▽アルコール度数…15.9%▽日本酒度…+4・5▽酸度…1.1
 ◆松の寿純米酒=写真左 香り穏やかで、口当たりの柔らかい純米酒▽製造責任者…松井宣貴▽仕込み水…超軟水の高原山麓自家湧水▽原料米…麹米、掛米ともに五百万石▽精米歩合…60%▽使用酵母…協会1401▽アルコール度数…15.5%▽日本酒度…+3・0▽酸度…1.4
 ●酒蔵推奨の店及び酒販店は、直接松井酒造店に問い合わせください。




【2006年9月15日とちぎ朝日掲載】








渡辺酒造(株)旭興


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大田原市須佐木797-1 
TEL.0287-57-0107
FAX0287-57-0457

淡麗甘口の酒を醸す

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 ブームに左右されない酒造りを続ける渡辺酒造(創業明治25年、渡辺脩司社長、従業員4人)。杜氏を務めるのは、南部杜氏の中田勉さん(72歳)。大手酒造メーカーを渡り歩き、3年前から渡辺酒造でアドバイザー兼務の造りを実践している。
 製造責任者として酒造設計、計画を建てるのは、専務でもある英憲(ひでのり)さん(32歳)。「私にとって杜氏というのは神聖なものです。食事でも風呂でも必ず杜氏が1番、2番が社長というふうに子供のころから見て育ち、そういうものだと思っていました。ですから、渡辺酒造の酒には、『杜氏・中田勉』を入れています」。中田杜氏は、難関の南部杜氏自醸清酒鑑評会で1位を取得する名杜氏。英憲さんも同鑑評会で2位を受賞。全国新酒鑑評会では2年連続金賞を受賞している。
 東京農大醸造科を卒業後、群馬の酒造メーカーで四年間造りを修行。27歳の時から実家に戻り本格的に始めた。
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 「酒の味に幅を持たせたかった」と色々試した。「速醸もとでも造ってみましたが、イメージ通りの味が出せなかったことから、生もとに挑戦しました」。昔ながらの伝統の技術、生もと造りは、明治時代、速醸?の登場と同時に廃れてしまった経緯がある。「なぜ廃れてしまったのか、コストなのか、手間がかかりすぎるのか、それとも味に問題があるのか、自分で納得するために生もとで醸しました」。
 周囲にその造り方を知る人もなく、国会図書館に足しげく通い文献を紐解き、独学で知識を得た。他の酒造会社の生?造りを片っ端から利き酒しては逆算、製造計画をデータ化し保存している。
 生もとで醸し今年で4年目。「『淡麗甘口』。生もとが一番理想の味に近かった」。
 香りが高いと新酒の時から味が丸く、在庫の面からもコスト削減が図れるなど、主流は華やかな香りの酵母がよく使われるなか、「香りが低く熟成を必要とするため、あまり使われなくなった協会酵母6号、7号を『たまか』では使用しています」。ひと夏を越し秋から出荷する「たまか」は先週発売になったばかり。年間一升瓶で2,000本程度の出荷で、毎年3カ月程度で完売する。販路は、県内が99.9%。そのうち県北が90%を占める、生粋の地酒だ。
 「これからもすっきりした甘みを追究していきたい」と英憲さん。

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 ■旭興純米酒=写真右 「旭興らしい」淡麗なお酒です。程良い香りで、食事と相性が良い。今の時期はぬる燗で鮎の塩焼きやお鍋にも合います▽杜氏名…中田勉(南部杜氏)▽仕込み水…武茂川の伏流水(那珂川系・軟水)▽原料米…麹米(栃木県産五百万石・60%)、掛米(ひとごこち・60%)▽使用酵母…協会1401号▽アルコール度数…15~16%▽日本酒度…+3▽酸度…1.5▽「酒」と「肴」のバランスを考え「名脇役」を演じられるように造ったお酒です。
 ◆たまか生もと純米吟醸=写真中 まろやかでコクのある深い味わいは生もと造りならでは。肉や冬の鍋物にも合う▽杜氏名…中田勉(南部50%)、掛米(雄町・55%)▽使用酵母…協会6号、7号▽アルコール度数…17.5▽日本酒度…+3~+4▽酸度…1.5~1.7
 ◆貴醸酒「百」=写真左 極甘口で、デザート酒として或は食前酒としてどうぞ。仕込み水の一部に純米酒を用いて醸造した濃厚で芳醇な琥珀色の酒。「日本酒はちょっと」という方にも美味しく飲んでいただける甘口のお酒▽杜氏名…中田勉(南部杜氏)▽仕込み水…清酒、武茂川の伏流水(那珂川系・軟水)▽原料米…麹米・掛米ともにとちぎ酒14・60%)▽使用酵母…協会1401号▽アルコール度数…16.5▽日本酒度…マイナス52▽酸度…2.4▽推奨の店及び酒販店は直接蔵元に電話で確認してください。


●生もと造り 蒸した米と麹、水をいくつかの木製の桶にいれる。しばらくすると、水と麹が水を吸い、膨れ上がり山状に盛り上がるので、これを櫂で摺りおろす。この作業を『山卸し』という。山卸しを数回繰り返した後、桶の中身をホーローのタンクにまとめる。その後、熱湯を詰めた木製の暖気樽をタンクに入れ、樽でかき回し酒毋の温度を徐々に上げていく。この作業を一日数回、30日前後続ける。生?造りは非常に手間のかかる造り方で、コスト面などからも廃れていった経緯がある。時間をかけ酒毋を造っていく過程で桶や暖気樽に付着していたり、酒造蔵の中の空気中に浮遊している乳酸菌や酵母が酒毋の中に入り増殖していく。生?の味や香りはそれぞれの酒蔵の酵母により決まると言われている。


 
【2006年10月20日とちぎ朝日掲載】










(株)渡辺佐平商店 清開

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日光市今市450
TEL/0288-21-0007
FAX.0288-21-2647
http://www.watanabesahei.co.jp

製造量の9割が純米酒

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 昭和49年から純米酒を醸し、今では全製造量の9割が純米酒という(株)渡辺佐平商店(創業1842年、渡辺護社長)。三倍醸造酒(普通酒)を造らなくなって20年というのも自慢の一つだ。
 「地元では、本醸造酒の愛飲者がまだまだいますので、すぐにとはいきませんが、いずれは百%純米酒にしたいと思っています」という専務の渡辺康浩さん(35歳)。「純米酒こそが地酒だ」とこだわる同社では、酒米の五百万石は日光市内の農家(糀谷盛造さん、齋藤幹雄さん、沼尾一郎さん、吉原敬博さん)を指定している。
 「鑑評会は否定しません。地元の農家の人を杜氏として迎えた場合は、鑑評会に出品し、技術の検証を図る必要があると思いますが、当蔵の高橋文夫杜氏(南部)は、30年のキャリアです。その技術は信頼しておりますので、鑑評会に出品する必要がありません」と言い切る康浩さん。「いずれは家業を継ぐ身でしたので、慶応義塾大学経済学部卒業後は、全く違う業種を選びました」と、宝石のミキモトで8年半営業職を経験。「生かすことのできない経験はないと思います」という。造り手ではなく、「杜氏に酒造りを提案できる経営者になりたい」と、現在は釜屋、麹屋の手伝いをしている。「純米ワールドの構築」が目標と話す。
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 年間1万人が見学に訪れる同社では、案内役は、社長、専務、杜氏が務める。「杜氏が見学案内を務めると、お客様から喜ばれることが多いので、杜氏が造りの最中であれば私が造りの手伝いに入ります」。
 酒蔵見学(日本酒教室)では、日本酒の原材料の話、酒と健康、地酒の特色、日本酒の選び方、日本酒雑学史、利き酒などで、所要時間は一時間程度の教室。10人から50人での受け付け(申し込みは電話かファクスで)。完全予約制。無料。

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 ■純米吟醸日光誉=写真右 口当たりがよく軽やかですっきりした味。白身魚の刺身やあっさりした食べ物に合う▽杜氏…高橋文夫(南部)▽仕込み水…大谷川伏流水▽原料米…麹米、掛米ともに五百万石▽精米歩合…掛米50%、麹米60%▽使用酵母…デルタ▽アルコール度数…15.3%▽日本酒度…+2▽酸度…1.7
 ◆純米大吟醸清開=写真中 柔らかい香りでまろやかで落ち着いた味。白身魚の刺身やユバに合う▽杜氏…高橋文夫(南部)▽仕込み水…大谷川伏流水▽原料米…麹米、掛米ともに山田錦▽精米歩合…掛米35%、麹米50%▽使用酵母…9号、M310号▽アルコール度数…15.7%▽日本酒度…+2▽酸度…1.7
 ◆自然醸清開=写真左 五味のバランスが取れた酒で、冷やでも燗でも可。米の風味が残る。煮魚料理や味のしっかりした鍋料理に▽杜氏…高橋文夫(南部)▽仕込み水…大谷川伏流水▽原料米…麹米、掛米ともに日本晴れ▽精米歩合…65%▽使用酵母…協会7号▽アルコール度数…14.7%▽日本酒度…+2▽酸度…1.8
 ●酒蔵推奨の店…酔心(朝日新聞宇都宮総局隣)、空庵(すかいあん=宇都宮駅東ホテルスカイ内)、金鍋(宇都宮の県体育館隣り)、高井家(日光)、ゆば亭ますだや(日光) ●取り扱い酒販店…日光市内の酒屋さん。他のエリアは直接渡辺佐平商店にお問い合わせください

【2006年10月6日とちぎ朝日掲載】













第一酒造(株) 開華

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佐野市田島町488番地
TEL.0283-22-0001
FAX.0283-24-6168
http//www.sakekaika.co.jp

ワンランク上の旨さへ

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 国酒を造り続け333年の第一酒造(創業1673年、島田嘉内社長、従業員15人)は、県内最古の蔵元であると同時に、その高い技術力は先駆け的存在でもある。今年3月火災に遭い、設備を含め100坪を消失。かねてより検討していたパストライザー(瓶詰後熱酒殺菌冷却装置)=写真下=の導入と吟醸室を併設した新麹室を造った。
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 生酒を除くすべての日本酒(全体の約95%)では、酒質を安定させるため加熱殺菌処理(火入れ)を行う。通常の火入れ方法は、酒を加熱した状態で充填する。外気と触れている状態で熱を加えるため、本来酒の中に閉じ込めておかなければならない風味が流失する。また、加熱した状態が長く続くと酒の劣化を招く。鑑評会に出品する高級酒などは、瓶に詰めてから湯煎で加熱し冷水で急冷する方法が取られるが、手作業になるため限られた酒にしか使えなかった。
 「パストライザーの導入により、すべての酒に旨味を閉じ込めたまま出荷できるようになりました。この機械は全国でも10数社しか導入していない最新設備です」と胸を張る同社専務の島田嘉紀(よしのり)さん。
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【タンクごと保冷している】


 「酒造りの基本は微生物が相手です。麹の外観、手触り、香り、温度など様子を把握するのは人間の五感です。最良の結果となるよう蔵人が操作をします。昔から、『1麹・2もと・3造り』と言われますように、麹の出来不出来は清酒の品質に大きな影響を与えます。良い麹を育てるための環境づくりとして、麹室を新設しました」。
 平成16年、酒類業界で初めて高級日本酒の製造として、県の認証企業に選ばれた。酒造技能士1級(杜氏)保持者が4人在籍し、育成が難しいと言われる酒米・雄町を自社田で栽培するなど、農産物検査技師も2人在籍する。「越後の名杜氏・力石武司さんの元で地元の若い技術者が育ってきています。酒造技術はもちろんですが、商品管理や企画、出荷に至るまでの過程で携わる人間にはプロ意識を持っていただいています」と高い技術力は人づくりからと話す嘉紀さん。
 全国新酒鑑評会では、20年間で11回金賞を受賞。関東信越国税局酒類鑑評会では殆ど入賞している。

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 ■開華 特別本醸造=写真右 上品な旨味と爽やかな喉越しの旨口酒。湯豆腐や生湯葉、ふろふき大根、出し巻き玉子によく合う。▽杜氏名…力石武司(越後・寺泊)▽仕込み水…秋山川伏流水(中硬水)▽原料米…麹米(五百万石59%)、掛米(あさひの夢59%)▽使用酵母…栃木酵母(TーS)▽アルコール度数…15%▽日本酒度…+2▽酸度…1.3
 ■開華 みがき竹皮=写真中 原酒ならではのふくよかな香りと、まろやかで豊かな旨味。サバの味噌煮や焼き鳥、すきやきに合う。▽杜氏名…力石武司(越後・寺泊)▽仕込み水…秋山川伏流水(中硬水)▽原料米…麹米(五百万石59%)、掛米(あさひの夢・とちぎ酒14号59%)▽使用酵母…栃木酵母(TーS)▽アルコール度数…17%▽日本酒度…+2▽酸度…1.5▼清酒の級別制度、公定価格が存在した昭和40年代に、初めて公定価格を超え発売した純米酒。普通酒が当たり前であった時代に、米を磨き。技を磨き、造りあげた商品。現在では第一酒造の主力商品となっている。
 ■開華 大吟醸=写真左 やわらかく調和のとれた透明な味の広がりと、上品で優雅な吟醸香で香りの高いタイプ。白身魚や海老、カニを素材にした淡白な料理に合う。▽杜氏名…力石武司(越後・寺泊)▽仕込み水…秋山川伏流水(中硬水)▽原料米…麹米、掛米とも山田錦、38%▽使用酵母…栃木酵母(Tー1)▽アルコール度数…16%▽日本酒度…+5▽酸度…1.2



【2006年11月6日とちぎ朝日掲載】










(株)富川酒造店 忠愛 富美川

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矢板市大槻998
TEL.0287-48-1510
FAX.0287-48-2798
http//www.kubun.jp/

さらっとした味わい酒


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 尚仁沢湧水を支流に持つ荒川の伏流水で酒を醸す富川酒造店(富川栄子社長、従業員3人)は、那須の殺生石で有名な九尾の狐伝説発祥の地であることから、屋号を「九分(くぶ)」としている。
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 芳醇な香りとさらっとした味わいが特徴の同蔵で杜氏を務めるのは、宮川信男さん(76歳)。新潟から毎年造りが始まる11月に蔵入り、今年で40年になる。高齢なこともあり、富川での酒造りは今期で最後になる。代わって杜氏を務めるのは、現在頭を務め30年の大谷努さん(矢板市在住)。ここ数年、実際の酒造りは大谷さんが行い、宮川さんは相談役だった。
 8年前、暮れも押し迫った、造りの真っ最中に先代社長が48歳の若さで急逝。造り手でもあった先代の損失は大きかったが、「杜氏も頭も本当によくやってくれました。注文も入ってましたし、酒造計画も出来ていましたから、中止するわけにはいきませんでした」と当時を振り返る妻で現社長の栄子さん(51歳)。
 先代は生前から「葬式で貰う酒も飲める酒にしたい」と普通酒にも糖類含有はしない造り手だった。10年間で7回も全国新酒鑑評会で金賞を受賞する力のある同蔵が、より高品質で味にこだわった「富美川」ブランドを立ち上げたのは、先代が亡くなってから。酒米の五百万石は、自家田で大谷さんが大事に育てている。田植えは、同蔵のユニークな体験ツアーから始まる。稲刈り、仕込み見学、日本酒受け取り?を毎年一般から参加募集し、今年は600人が参加する大イベントになった。12月3日には、単独イベントとして、「忠愛」の純米吟醸や普通酒の新酒祝いを兼ねたイベントを企画している。詳しくは、富川酒造店まで。
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 ■忠愛純米酒「五百万石】=写真右 自社田で丁寧に栽培した酒米を使用し、飲み口スッキリ、飲みごたえのあるしっかりした味わいの純米酒で、鍋物やしもつかれ、塩辛など味の濃い肴にも合う▽杜氏名…宮川信男(越後出身)▽仕込み水…荒川伏流水▽原料米…麹米、掛米ともに五百万石▽精米歩合…60%▽使用酵母…明利10号▽アルコール度数…15~16%▽日本酒度…+2▽酸度…1.4
 ■富美川純米大吟醸 無濾過生原酒山田錦=写真中 高品質と味を守るため一種類につき一タンクの小仕込みで醸すため、香り高く味わい深いコクのあるきれいなお酒に仕上がっている。刺身や豆腐料理のほか、キンキンに冷やしロックで飲むともんじゃ焼きなどにも合う▽杜氏名…宮川信男(越後出身)▽仕込み水…荒川伏流水▽原料米…麹米、掛米ともに山田錦▽精米歩合…49%▽使用酵母…9号▽アルコール度数…16~17%▽日本酒度…+-0▽酸度…1.9▼蔵元推奨の店…そば処、酒処くりはし(さくら市)、武蔵屋(宇都宮市)、俵寿司(大田原市)
 ■忠愛特別本醸造 とちぎ酒14=写真左 栃木県で開発した酒米と酵母を使用した、辛口のど越しさわやか。燗で良し、冷やでも良しの食中酒。鍋物、おでん、ブリ大根などの肴にも合う▽杜氏名…宮川信男(越後出身)▽仕込み水…荒川伏流水▽原料米…麹米、掛米ともにとちぎ酒14▽精米歩合…60%▽使用酵母…栃木酵母(TーS)▽アルコール度数…15~16%▽日本酒度…+4▽酸度…1.2
 ▼取り扱い酒販店…月井商店(那須 TEL0287・76・2825)の他は富川酒造店に直接問い合わせください。お近くの酒屋さんを紹介します。



【2006年12月1日とちぎ朝日掲載】










仙禽酒造(株) 仙禽

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さくら市馬場106
TEL.028-682-3411
FAX.028-682-3412

木桶仕込みで原点回帰

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  創業200年を記念し、『原点回帰』を掲げる仙禽酒造(創業1806年、薄井篤社長、従業員15人、製造量800石)。発案者は、蔵に戻って3年目の一樹専務=写真右=(26歳)。フランス等欧州で学び、ソムリエの資格を持つ異色の跡継ぎは、「ワインに負けない日本酒文化の確立を目指したい。そのために木桶を使った、日本で最も古い醸造方法である山廃仕込みや生もと仕込みなど、日本人が忘れかけている技術を甦らせて醸していきたい」と話す。
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 昭和30年頃、微生物の管理向上に優れているホーローや樹脂製のタンクに押され、木桶は酒蔵から姿を消した。最近、福島などの一部酒蔵で、木桶を見直す動きが出てきてはいるが、県内ではホーロータンクが主流。
 「日本酒は工業製品ではなく、伝統工芸品と思っています。将来的には、特定名称酒はすべて木桶で仕込みたいと思っています。ですから、製造量も現在の半分ほどになりますが、良いものを少し造るようにしていきたい」。
 普通酒が全製造量の約4割を占める仙禽酒造だが、「今、普通酒を造らなくなると当社は廃業に追い込まれます。徐々にですが、特定名称酒に切り替え、澤姫さんのように地産地消を実践していきたいと思っています」と一樹専務。「来春には木桶を追加していきます。また、山梨の酒造会社で修行している弟の真人が戻りますから、二本柱で仙禽をもり立てていきます」。
 ビールやワインには、原料由来の色があるのに対し、日本酒は等級制の時代から『無色透明でなければ売れない』悲しい過去を引きずったまま現在に至っている。搾ったばかりの日本酒は琥珀色をしているが、活性炭を添加し濾過することにより無色透明になる。
 「『原点回帰』は、大昔の酒造りを再現することです」と一樹さん。この冬から木桶仕込みが始まり、2月には新酒が誕生する。
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 ■木桶仕込み山廃純米吟醸 仙禽=写真右 木桶特有のやさしさ、ふくよかさ、味わい深さがある。穏やかでドライフルーツのような香り、香ばしいフレーバーで甘酸っぱく、豊かな旨味が広がる濃醇甘口タイプの酒。サバの味噌煮、白身魚のクリームソテー、フォアグラカナッペ、焼き鳥塩味、エビチリソース炒め、牡蠣の土手鍋、カニみそ、豚肉の生姜炒め等に合う。▽製造責任者…小林昭彦(栃木出身)▽仕込み水…鬼怒川の伏流水▽原料米…とちぎ酒14(58%)▽使用酵母…栃木県酵母▽アルコール度数…16?17%▽日本酒度…-2(予定値)▽酸度…1.9(予定値)
 ◆木桶仕込み山廃純米 仙禽=写真中 バナナチョコレート、バニラを思わせる豊かで香ばしい香り。甘味と酸味が絶妙に調和し、深い旨味が広がる濃醇旨口タイプの酒。ウナギの蒲焼き、鴨のロースト、豚の角煮、北京ダック、エスカルゴのバターソース、子牛のオイスターソース炒めなどに合う。▽製造責任者…小林昭彦(栃木出身)▽仕込み水…鬼怒川の伏流水▽原料米…とちぎ酒14(80%)▽使用酵母…栃木県酵母▽アルコール度数…16?17%▽日本酒度…+-0(予定値)▽酸度…2.0(予定値)
 ◆大吟醸しずく酒 仙禽=写真左 高貴で繊細な香り。さわやかでキレのある味わい。パッションフルーツ的な香り。高いフレーバーが口中に広がり、最後に辛口に仕上がる ▽製造責任者…小林昭彦(栃木出身)▽仕込み水…鬼怒川の伏流水▽原料米…山田錦(40%)▽使用酵母…栃木県酵母▽アルコール度数…16%▽日本酒度…+5▽酸度…1.6


【2006年12月15日とちぎ朝日掲載】









宇都宮酒造(株)四季桜

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宇都宮市柳田町248
TEL.028-661-0880
FAX.028-664-0944
http://wwwshikisakura.co.jp

蔵付き酵母開発に情熱

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 「良い酒を造るにはまず米作りから」と昭和47年、県内の酒蔵に先駆け、90アールの自社田で酒造好適米の五百万石を作り始めた、宇都宮酒造(創業1871年、菊地正幸社長、従業員10人、製造石数1800石)。先代社長の今井源一郎さんが、暇な夏場を利用して米づくりを始め、現在は地元・柳田町の五農家が柳田酒米研究会を組織し、酒米づくりに取り組んでいる。
 「自家精米ができなくなった時は、酒造りを止める時です」と菊地社長(45歳)。「米の出来は毎年違います。玄米を手にして、どう磨けば旨い酒になるかから消費者の口に入るまでが酒造りと思っています。全部自分のところで手をかけたいと思っています。精米も蔵によって違うものです」。自家精米機を保有する蔵は全国でも4割ほどで、県内の殆どの蔵では外注しているのが現状。

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 「より美味しい酒を造れる可能性があれば、惜しまず力を注ぎたい。全量県産米で醸せれば良いのですが、山田錦を使えば絶対美味しいというわけではありませんが、美味しくなる可能性があるわけです。精米歩合80%より60%にしたほうが美味しくなる可能性が高いので、最低でも65%は磨きます」と菊地社長。
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 麹屋を担当するのは、昨年専務に就任した今井昌平さん(36歳)。今井さんは、東京農大醸造学科を卒業後、熊本県酒造研究所「香露」などで修行を積み、平成8年宇都宮酒造に入社。麹屋を任され初めて醸した酒が、やさしい味わいの純米吟醸「今井昌平」。
 今井さんは、学生時代から酵母の研究を重ねてきており、現在は数億とも言われる蔵付き酵母の研究に情熱を傾けている。「四季桜を生かす酵母が見つかるか分かりませんが」培養を重ね、少量ずつだが蔵付き酵母で酒造りを行い研究を続けている。蔵付き酵母の培養に成功すれば、香りまでがオリジナルになる。「四季桜の味を守りながら、より旨い酒を醸していきたい」と語る。
 今は、南部杜氏の川村正二さん(76歳)の元で、「学校では習得できない四季桜のムロ(麹室)独自のクセとどう付き合い生かすことができるかを実践で学んでいる」。川村杜氏は、先代が何度もラブコールを送り続けていた名杜氏。「専務には杜氏の技術はもとより、人間性や酒造りのセンスまでも学んでほしい」と菊地社長も次代の杜氏に熱いエールを送る。
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 ■四季桜純米吟醸酒=写真右 やや辛口で芳醇。酸の旨味を生かした爽やかな味わいが特徴のお酒▽杜氏名…川村正二(南部杜氏)▽仕込み水…鬼怒川の伏流水▽原料米…山田錦▽精米歩合…58%▽日本酒度…+3▽酸度…1.5▽使用酵母…香露酵母▽アルコール度数…16.5%
 ◆四季桜大吟醸生酒=写真中 やや辛口で芳醇。しぼりたてのフレッシュ感に溢れた厚みのある味わいが特徴のお酒▽杜氏名…川村正二(南部杜氏)▽仕込み水…鬼怒川の伏流水▽原料米…山田錦▽精米歩合…50%▽日本酒度…+5▽酸度…1.2▽使用酵母…栃木県酵母▽アルコール度数…17.5%
 ◆四季桜 今井昌平(純米吟醸酒)=写真左 やや辛口で芳醇。ほのかな吟醸香と優しい味わいが特徴のお酒です▽杜氏名…川村正二(南部杜氏)▽仕込み水…鬼怒川の伏流水▽原料米…五百万石(柳田産)▽精米歩合…55%▽日本酒度…+4▽酸度…1.3▽使用酵母…栃木県酵母▽アルコール度数…15.5%



【2007年1月5日とちぎ朝日掲載】








(株)島崎泉治商店 泉月花

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茂木町茂木1720
TEL.0285-63-0006
FAX.0285-63-1090
http://www.sengetsuka.com

開かれた酒蔵目指す

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 年間製造量10万?を茂木町内だけで全量消費するという島崎泉治商店(創業1703年、島崎利一社長、従業員3人)。創業300年を超える同蔵は、佐野の第一酒造に次ぐ老舗。代表の利一さん(54歳)は、本籍地を滋賀県蒲生郡日野町のまま移籍しない誇り高き近江商人の末裔だ。
 蔵は同町の中心街に位置し、約1300坪の敷地内には、土蔵造りの酒造工場や築200年を超える仕込み蔵など歴史の重みがそこかしこにある。仕込みが終わった後は、地域住民に蔵を開放し街角ミニギャラリーとして、その歴史的空間を無償で提供している。
 日本棚田百選に認定されている茂木の棚田で収穫する、酒造好適米の五百万石を全量使用した「純米吟醸 棚田の雫」は、同町農林課が企画したユニークな酒で、島崎泉治商店と阿部酒造店の両酒蔵で別々に醸す。原料米、日本酒度、精米度、アルコール度数もラベルも同じ。ただ、「阿部酒造店とは水脈も違えば、杜氏も違います。わが社は越後杜氏、阿部酒造店は南部杜氏です。毎年、飲み比べを楽しんでいます」と話す利一さん。両蔵とも、全国新酒鑑評会で金賞受賞歴のある実力のある酒蔵。
 島崎泉治商店で杜氏を務めるのは、和田和司さん(新潟県小千谷市)。杜氏歴30年になる和田さんは、同蔵で酒造りを始め3年目になる。平成16年には、全国新酒鑑評会で金賞受賞、同17年は入賞を果たしている。
 「歴史にあぐらをかいているわけにはいきません。わが社は品質本意を社是としています。これからも美味しい日本酒造りを心がけていきたい」と利一さん。
 地域住民への酒蔵開放のみならず、「酒蔵見学も大歓迎です。大吟醸の仕込みを見ていただいても結構です。カメラ片手に写真を撮りにくる方もいらっしゃいます。できれば少人数でのお越しをお待ち申し上げています」と、開かれた蔵を目指している。
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 ■特別純米・栄屋利兵衛=写真右 日本料理のみならず、中華、洋食にもしっかりと受け入れられる、昔ながらの日本酒本来の味。しっかりとした飲みごたえがあり、冷や、常温、燗すべてに適している。▽杜氏名…和田和司(新潟小千谷市)▽仕込み水…那珂川の伏流水(自家用井戸水)▽原料米…麹米・掛米ともに雪の精▽精米歩合…65%▽使用酵母…701号▽アルコール度数…15.4▽日本酒度…+-0▽酸度…1.5
 ◆大吟醸・泉月花=写真中 日本料理の繊細な味に最も適合。酒造技術の頂点・大吟醸は酒造好適米を極限まで磨き上げ、低温長期醗酵によってその香り高さが生まれます▽杜氏名…和田和司(新潟小千谷市)▽仕込み水…那珂川の伏流水(自家用井戸水)▽原料米…麹米・掛米ともに山田錦▽精米歩合…40%▽使用酵母…明利310号▽アルコール度数…17.4▽日本酒度…+7▽酸度…1.4
 ◆純米吟醸・棚田の雫=写真左 爽やかな風が吹き抜ける清涼感の喉越しと後に残る馥郁な香りが心地よい気持ちにさせる。鮎の塩焼きがベストマッチ▽杜氏名…和田和司(新潟小千谷市)▽仕込み水…那珂川の伏流水(自家用井戸水)▽原料米…麹米・掛米ともに茂木産五百万石▽精米歩合…55%▽使用酵母…明利310号▽アルコール度数…15.6▽日本酒度…+-0▽酸度…1.4


【2007年1月19日とちぎ朝日掲載】








森戸酒造(株) 十一正宗

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矢板市東泉645・647-2
TEL.0287-43-0411
FAX.0287-44-1066

矢板のリンゴから花酵母

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 花酵母の酒をシリーズ化し話題を呼んでいる酒蔵・森戸酒造(明治7年創業、森戸康雄社長、従業員七人、製造石数500石) では、昨年のアベリア、ツルバラ、ニチニチソウに引き続き今年は、サクラ、リンゴ、ツツジの花酵母を使用して酒を醸している。中でも、リンゴは矢板市の特産品ということもあり、酒の出来には強い関心を寄せている。
 森戸酒造で杜氏を務めるのは、経営者兼務の森戸康雄さん(44歳)。花酵母は、森戸さんの恩師・東京農大酒類学研究室の中田久保教授が、自然界の花から純粋分離に成功したもので、3年前から森戸さんも会員となり花酵母を扱うようになった。中でもリンゴの花酵母は、昨年森戸さんが、矢板市内のリンゴ農園から分けてもらった5000株の中から偶然に酵母菌が採取できたもの。
 「これで、名実ともに米、水、酵母、人すべてが県産といえる酒が醸せます」と胸を張る。リンゴの花酵母を使用した酒は今月から仕込みに入る。「新酒として発売できるとは思いますが、出来上がってみないことには分かりません。熟成が必要であれば数カ月寝かせる必要もあります。ただ、リンゴの酵母は引っ張れないので、アルコール度数の低いライトな物にしようと計画しています。従来の酵母は蔵付き酵母などで、蔵の中から探し出し培養しています。それに比べ花酵母は自然界の中から探しています。花酵母の酒は花の香りがします。ですから、和食だけに留まらずイタリアンレストランなどにも卸しています」。
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 「高級酒に限らず、普通酒や本醸造酒の造りも機械任せにはできません」と、麹室の温度はコンピューターで管理されているが「機械というものはトラブルがつきものですから、自分で確認してからでないと造りの最中は安心して眠れませんし、人が手を入れると酒も美味しくできます」と11月から3月までは、社長業もこなしながら、酒造りも行うため、朝八時から深夜2時ころまでが通常勤務時間となり、吟醸造りが始まると一日の睡眠時間は3時間程度になる。「美味しい酒を飲んでいただきたい一心です」と微笑む。
  【蔵のイベント】田植えから酒造りまでしませんか。5月中旬からの田植えに始まり、稲刈り、仕込み、酒引き渡しまでのイベント。消費者とともに酒米作りを行うもので今年10年目。会員は150人。会費は、純米吟醸酒(1升瓶)3本としての値段。イベントの度、そば食べ放題なども組み込んでいる。詳細は、塩原やしおの会事務局TEL0287・35・2022 
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 ■本醸造・たかはら=写真右 地元では幻の酒と言われるほどの酒で、やや辛口な軽い酒。昭和50年、1級酒レベルだが、あえて2級酒として発売していた▽杜氏名…森戸康雄(矢板市)▽仕込み水…高原山の伏流水(自家用井戸水)▽原料米…麹米(五百万石)・掛米(日本晴れ)▽精米歩合…65%▽使用酵母…701号▽アルコール度数…15.4▽日本酒度…+2~+3▽酸度…1.4
 ◆純米吟醸・尚仁沢=写真中 仕込み水は自家用井戸水ではなく、塩谷町と契約し二?車で買いに行く、名水仕込みのふくよかな香りの酒▽杜氏名…森戸康雄(矢板市)▽仕込み水…尚仁沢湧水▽原料米…麹米・掛米ともに(五百万石)▽精米歩合…55%▽使用酵母…県T?S▽アルコール度数…15.5▽日本酒度…+3~+4▽酸度…1.4
 ◆十一正宗純米吟醸・つるばら=写真左 穏やかな香り味のバランスの良い花酵母・ツルバラを使用した酒▽杜氏名…森戸康雄(矢板市)▽仕込み水…高原山の伏流水(自家用井戸水)▽原料米…麹米(五百万石)・掛米(栃酒14)▽精米歩合…60%▽使用酵母…つるばらの花酵母▽アルコール度数…16~17▽日本酒度…+3~+4▽酸度…1.4~1.5



【2007年2月2日とちぎ朝日掲載】










(株)島崎酒造 東力士

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那須烏山市中央1-11-18
TEL.0287-83-1221
FAX.0287-84-1728
http://www.azumarikishi.co.jp

旨口の熟成酒を主軸に

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 県内初、この2月から県産のコシヒカリで醸したドブロクを出荷する島崎酒造(1849年創業、島崎利雄社長、従業員40人、製造石数3000石)。「本気で遊び心から造りました」と話す同社専務の島崎健一さん(37歳)。東京農大卒業後、他社で3年酒造りを学び蔵に戻った。新酒の企画立案や酒造計画の大筋は島崎専務が決める。仕込み計画を担当するのは、製造責任者の山上龍雄さん。4年前まで同社には新潟から杜氏が来ていた。山上さんは歴代の杜氏から技術を習得、20年の経験を持つ。
 島崎酒造が、他社との差別化を明確にしたのは、第2次世界大戦末期の戦車製造地下工場跡地の洞窟と巡り合えたこと。昭和45年から、鑑評会に出品する大吟醸の長期熟成を考え、冷蔵庫や瓶詰め工場の下に地下室を造り、熟成を重ねてきたがそれも手狭になったため平成11年に面積700坪(1升瓶20万本貯蔵可能)の洞窟にいきついた。格好の保管場所を得るきっかけになったのは、島崎社長が中学2年生の時地下工場整備に携わった経験があったことから。同社が貯蔵庫として利用するまで、周辺でもその存在は知られてなかった。
 現在は、鑑評会用の高級銘柄のみならず、本醸造クラスの酒も洞窟で貯蔵しているため、その数は13万本にも及ぶ。洞窟内は夏は15度、冬は4度と熟成に最適な環境。「洞窟蔵の中には四季があります。温度差が瓶の中に対流を生みだす効果があり、大型冷蔵庫で一定の温度で冷やし続けるより酒造りには好環境といえます」と島崎専務。そして、洞窟での熟成を生かした酒として、新ブランド「熟露枯(うろこ)」を昨秋県外向けに出荷した。古酒独特の香りではなく、まろやかな味わいの同酒は、洞窟で2、3年熟成させたもの。今年から県内でも販売を計画している。
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 長期熟成酒は、昭和45年から今年まで一年も欠かさず貯蔵。その間、原料米や杜氏が変わったりと違いは多少あるが、熟成酒の貴重なデータを生かした酒づくりをしている。「大吟醸造りの技術を一般酒にも生かしていきたいと思っています。味には特にこだわっています。甘口より旨口。濃醇な酒をこれからも醸していきたい」と島崎専務。
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 ■東力士大吟醸秘蔵五年古酒 大吟醸長期熟成酒ならではのまろやかさで、奥深く気品ある香味を備えた熟成酒。蔵元製造のクリームチーズ吟醸粕漬け、うなぎ蒲焼き、やきとり、すきやき等の料理とともに▽製造責任者…山上龍雄(那珂川市)▽仕込み水…地下水(硬度3.4)▽原料米…麹米、掛米ともに山田錦▽精米歩合…40%▽日本酒度…+5前後▽酸度…1.2前後▽使用酵母…協会9号系▽アルコール度数…17~18%
 ■東力士純米大吟醸中取り無濾過生原酒 しぼりたての最高品質の部分のみをそのまま瓶詰め。華やかな香りと素材感のあふれる上品な味わい。天ぷら、鮎の塩焼き、蒸し鳥、しめ鯖などの料理に▽製造責任者…山上龍雄(那珂川市)▽仕込み水…地下水(硬度3.4)▽原料米…麹米、掛米ともに県内産五百万石▽精米歩合…50%▽日本酒度…+-0前後▽酸度…1.5前後▽使用酵母…県酵母のTーF▽アルコール度数…16~17%
 ◆本醸造秘伝旨口東力士  お米のやさしい甘さを引き出しなめらかな口当たりとすっきりとしたキレ味の蔵元伝統の旨口酒。幅広い料理に合う。煮魚、照り焼きなどの醤油ベースの煮物、焼き物がおすすめ▽製造責任者…山上龍雄(那珂川市)▽仕込み水…地下水(硬度3.4)▽原料米…麹米、掛米ともに雪の精▽精米歩合…65%▽日本酒度…-6前後▽酸度…1.2前後▽使用酵母…協会7号▽アルコール度数…15~16%


【2007年2月16日とちぎ朝日掲載】









片山酒造(株)柏盛

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日光市瀬川146-2
TEL.0288-21-0039
FAX.0288-22-6911
http://www.kashiwazakari.com

手づくりのこだわり酒


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 「良い酒を造るには、良い水、良い米を使うのは当たり前。当社は、小蔵だからこそ、昔ながらの手づくり技法で高級酒のみ醸しています」と熱く語る片山酒造(創業明治13年、片山貴之社長、従業員10人、製造石数200石)の片山当主。
 同蔵の一番の特徴は、醪(もろみ)を搾る際自動圧搾機を使わず、全量を佐瀬式の槽(ふね)搾りで行う。槽搾りは技術と労力を必要とすることから、使用する蔵は全国でも少ない。袋から少しずつ染み出す酒は雑味が少ないのが特長。1タンク4000リットルを7リットル入る袋に醪を詰めては、袋の口を1枚ずつ折り重ねていく丁寧な仕事が要求される。1タンク搾るのに3日以上と時間も掛かるが、「量より質に重点をおいています」とこだわりぶりを鮮明にする。
 片山の酒瓶には、『大吟醸』や『純米』のラベルは貼っていない。「小売店を通さず、製造直売ですから、一つずつ商品説明もできますし、大げさにするのが苦手です」と飾らない答え。
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 3年前、全国新酒鑑評会金賞など過去に35回以上の受賞歴を持つ、名匠・越後杜氏の松井栄一さん=写真上=を招き、こだわりに磨きが掛かった。リピーターも増え、この3年間は全量完売続き。「良い酒を造りたい一心での厳しさだと思うのですが、とにかく厳しい人です。名匠の下でより旨い酒を醸していきたい」と片山当主。
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 ◆原酒柏盛「ほほえみ」 大吟醸。兵庫県産山田錦を使用し、サラッとしたフルーティーな酒です。日本酒度+5でも、フルーティーさから辛さを感じさせない。食前酒としてすすめたい逸品 ▽杜氏名…松井栄一(新潟県)▽仕込み水…大谷川伏流水▽原料米…麹米・掛米ともに山田錦▽精米歩合…45%▽使用酵母…TーF▽アルコール度数…17%▽日本酒度…+5

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 ◆原酒柏盛「やまぶき」 純米大吟醸。原酒の深い味わいプラス豊かな香りと米の旨味が生きた酒。料理を選ばない。食中酒としてもすすめたい逸品 ▽杜氏名…松井栄一(新潟県)▽仕込み水…大谷川伏流水▽原料米…麹米・掛米ともに山田錦▽精米歩合…45%▽使用酵母…TーF▽アルコール度数…17%▽日本酒度…+5
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 ◆原酒柏盛「素顔」 本醸造。搾り立てそのままの無濾過生原酒。原酒ならではのコクがありながら、フレッシュさが特長で和食全般に合う。食中酒としてすすめたい逸品 ▽杜氏名…松井栄一(新潟県)▽仕込み水…大谷川伏流水▽原料米…麹米・掛米ともに五百万石▽精米歩合…65%▽使用酵母…協会701▽アルコール度数…19%▽日本酒度…+2



【2007年3月2日とちぎ朝日掲載】







若駒酒造(株) 若駒 羽衣伝説

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小山市大字小薬169-1
TEL.0285-37-0429
FAX.0285-37-0743

木桶仕込みの雫採り酒

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 酒造りの歴史は、腐造(ふぞう=醗酵中に酢酸菌が大繁殖して酢になり、悪臭を放ち酒としては使い物にならなくなること)との闘いの歴史でもあった。腐造の原因の一つに木桶を挙げる酒造関係者もいる。大量の米を原料に造る酒で腐造を出すと、蔵の廃業にもなりかねない重大な問題。
「腐造は怖いですから、小ロットで木桶仕込みに挑戦しました」と話す若駒酒造(1860年創業、柏瀬謙二郎社長=写真上=、従業員1人、製造石数200石)の常務、柏瀬英子さん。
 日本古来の酒造り・木桶仕込みに取り組むきっかけになったのは、長野県小布施町の桝一市村酒造場を木桶仕込みで復活させた米国人女性、セーラ・マリ・カミングスさんの講演を聞いてから。「セーラさんの温故知新に心動かされ、本来の日本酒ってどういうものかと思って醸しました」と英子さん。
 搾り方にもこだわった。圧力をかけずに滴り落ちた雫だけを集める雫採りは、鑑評会用の酒など、特別な酒にしか使わない最高級の搾り方。瓶詰めの際に火入れ、加水(清酒は通常水を加えアルコール度数を抑える)もしない生原酒という贅沢な造り。上品な酒質と美しい味が期待できる逸品。4合瓶で500本の限定品として発売した。
 「小さな蔵ですから、米の個性を最大限生かした上質の酒を少しずつ醸していきたい」と話す英子さんは、外回りの営業のほか麹屋の顔も持つ。杜氏が帰宅したあとは、英子さんが酒の面倒を一手に引き受ける。麹室内は、コンピューター制御されておらず「麹米の一箱、一箱温度が違いますから、慣れてきても寝ずの番が続きます」。
 杜氏の柏原盛康さんは、造りをやらせて欲しいと若駒酒造に飛び込み20数年。「多くを語らず、もくもくと造りに取り組んでくれる。ありがたいです」と社長。孫の柏瀬幸裕さんは現在、奈良の酒蔵で造りの修行中=写真下、この春、蔵に戻ってくる。「夢を持って帰ってきますから、これから益々楽しみです」と母の顔も覗かせる英子さん。
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【若駒酒造提供写真】

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【若駒酒造提供写真】

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【若駒酒造提供写真】

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■木桶仕込み カネタマル純米生原酒=写真右 穏やかな香りに米の旨味と酸味が程良く調和した、まろ味のあるお酒です。お料理との相性も良く、食中酒に適しています。焼き魚、中華、焼き肉など料理の幅も広がることでしょう。▽杜氏名…柏原盛康(小山市)▽仕込み水…日光山系伏流水(小山水)▽原料米…麹米、掛米ともに栃酒14号▽精米歩合…60%▽使用酵母…小川酵母▽アルコール度数…17~18度▽日本酒度…マイナス3▽酸度…1.8
 ■純米吟醸五百万石善十郎=写真中 ほのかな香りで、米の味がしっかりして、味わい豊かでありながらすっきりした辛口のお酒です。まぐろやパスタ料理にも合います。 ▽杜氏名…柏原盛康(小山市)▽仕込み水…日光山系伏流水(小山水)▽原料米…麹米、掛米ともに五百万石▽精米歩合…55%▽使用酵母…栃木県酵母▽アルコール度数…15~16度▽日本酒度…プラス4▽酸度…1.6
 ■万延しぼりたて生原酒=写真左 さわやかな香りで濃醇な米の旨味が豊かに口の中に広がるキリッとしたやや辛口のお酒です。 しめさばやシーザー・サラダ、まぐろ料理に合います。▽杜氏名…柏原盛康(小山市)▽仕込み水…日光山系伏流水(小山水)▽原料米…麹米、掛米ともに栃酒14号▽精米歩合…60%▽使用酵母…小川酵母▽アルコール度数…17~18度▽日本酒度…プラス2▽酸度…1.7 

【 2007年3月16日とちぎ朝日掲載】










惣誉酒造(株) 惣誉

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芳賀郡市貝町大字上根539
TEL.0285-68-1141
http://www.sohomare.co.jp

普通酒にも最高の米


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 やわらかくて風味のある酒が特徴の惣誉酒造(明治5年創業、河野遵社長、阿部孝男南部杜氏、製造スタッフ11人)。「最良の米を使って本物の良い酒を醸しています」という同社では、他社では吟醸酒や大吟醸酒にのみ使う酒米・山田錦を普通酒の麹米にも使用している。
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 「普段飲む晩酌酒をいかに良くするか、普通酒の酒の良さこそ蔵の顔であると信じています」と話す河野社長。地酒であることに徹している惣誉は、その生産量の99%以上が県内で消費されている。
 特A地区の山田錦使用量は全国でもトップクラス。特定名称酒の原料米はすべてが山田錦を使用。普通酒に全量使用すると高額な酒になるため、掛米には五百万石や美山錦を使う。酒米は全量自家精米するというこだわりに、「酒造りの始まりは精米です。原料米の質がそのまま酒の出来上がりに反映しますから、造り手の立場で精米しています」そして蒸米は、吟醸用蒸米に開発された甑(こしき)ですべての白米を蒸す。
 最新設備を導入し一貫した品質管理を行いながら、「手間を掛けた方が良い部分には、徹底して手間を掛けます」と、麹づくりは一切機械を使用せず、すべてが手づくり。「製造部門はほとんどが手づくりです」。
 「製造担当は住み込みで働きます。朝九時から夕方5時、6時で終わる仕事はありません。酒は生き物ですから、寝ずの番も当然あります」と河野社長。阿部杜氏の下で酒造りの修行をする牛久和規さん(33歳、11造り目、南部杜氏資格、酒造技能士1級保持)と秋田徹さん(37歳、7造り目)の2人は、酒造りに魅せられ昼夜を問わず働く。
 惣誉では、6年ほど前から生もとづくりにも力を入れ、日本酒本来の伝統の味を復活させている。
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【惣誉酒造提供写真】
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【惣誉酒造提供写真】
 ■惣誉 辛口特醸酒 辛口好みの軽快できめ細かな酒。「普通の酒のよさこそ蔵の顔」という蔵の方針を代表する酒。普通の価格でいかに美味しい酒を造るか考えている ▽杜氏…阿部孝男(岩手出身)▽仕込み水…鬼怒川水系の伏流水▽原料米…麹米(山田錦)、掛米(五百万石)▽精米歩合…67%(自家精米)▽使用酵母…7号、9号▽アルコール度数…15%▽日本酒度…+4~+5▽酸度…1.2
 ■惣誉 純米吟醸生?仕込=写真右 熟成を経た厚みのある深い味わい。正統派の純米吟醸酒 ▽杜氏…阿部孝男(岩手出身)▽仕込み水…鬼怒川水系の伏流水▽原料米…麹米、掛米とも(特A地区山田錦)▽精米歩合…55%(自家精米)▽使用酵母…9号系▽アルコール度数…15%▽日本酒度…+3~+4▽酸度…1.6
 ■惣誉 純米大吟醸生もと仕込=写真左 熟成したエレガントな香味の純米大吟醸。洗練された上質の旨味が楽しめる ▽杜氏…阿部孝男(岩手出身)▽仕込み水…鬼怒川水系の伏流水▽原料米…麹米、掛米とも(特A地区山田錦)、▽精米歩合…45%(自家精米)▽使用酵母…9号系▽アルコール度数…16%▽日本酒度…+3~+4▽酸度…1.5
 【銘酒に合う肴】3銘柄とも幅広い和食に合うが、純米大吟醸生?仕込の洗練された味わいは、懐石料理にもぴったり。冷や(井戸水程度の温度)でも燗(お風呂の温度)でも美味しい。


【2007年4月6日とちぎ朝日掲載】









(株)外池酒造店 燦爛

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益子町塙333-1
TEL.0285-72-0001
FAX.0285-72-0003
E-mail:info@sanran.co.jp
http://www.sanran.co.jp


香り豊かな淡麗旨口

 益子の観光資源を取り込み、製造直売を積極的に展開する外池酒造店(昭和12年創業、外池茂樹社長、従業員32人、製造石数1,000石)。「益子の文化とともに味わっていただきたい」ことから、観光部を設置。集客に向け窯元や農協と足並みを揃え、旅行会社にも営業に行く。益子には年間150万人が訪問。同蔵元には12万人が足を運ぶ。
 酒造好適米の五百万石を益子町山本地内で、農家とともに生産。酒米づくりを通して村おこしにも一役買っている。

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 「酒は、酒質だけではないと思います。より美味しい酒を造る努力はどこの蔵でも一緒ですが、美味しく造れば売れると思うのは幻想です。いかに飲んでいただけるか営業展開が鍵です」と外池社長(48歳)。
 地元愛飲家から支持されているのは、本醸造辛口。軟水仕込みの酒は、まろやかな辛口になる。生詰めなどもあるため、ミクロフィルターを使い水を濾過、安全にも配慮は欠かさない。
 「単に淡麗辛口、香りも豊かだけではなく、米の旨味を生かした食中酒が主流です。小原杜氏は、純米酒が得意」。厳格な親方の下で地元採用の造り手が育っている。


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 ?燦爛生酒=写真右 わずかに果実に似た香りがあり、ほのかに旨味がある。茶碗蒸しや湯豆腐とともに ▽杜氏名…小原公正(南部杜氏)▽仕込み水…日光連山の伏流水(軟水)▽原料米…麹米、掛米ともに月の光▽精米歩合…65%▽使用酵母…協会901▽アルコール度数…17~18度▽日本酒度…+3▽酸度…1.7▼推奨の店…ぶんぶん(真岡市)、居酒屋とん兵(宇都宮市)
 ?燦爛大吟醸=写真中 フルーティーな香りと気品ある繊細な味わいが特徴で、鮎の塩焼きや生ガキのレモン添えなどでいただきたい ▽杜氏名…小原公正(南部杜氏)▽仕込み水…日光連山の伏流水(軟水)▽原料米…麹米、掛米ともに山田錦▽精米歩合…38%▽使用酵母…県酵母T?F▽アルコール度数…17~18度▽日本酒度…+4▽酸度…1.3▼推奨の店…すし山法師(真岡市)
 ?燦爛純米酒=写真左 コクと旨味をもちながらも淡麗な味。焼き鳥やすき焼きなど濃いめの味にも合う▽杜氏名…小原公正(南部杜氏)▽仕込み水…日光連山の伏流水(軟水)▽原料米…麹米、掛米ともに玉栄▽精米歩合…65%▽使用酵母…協会901▽アルコール度数…15~16度▽日本酒度…+4▽酸度…1.7▼推奨の店…やきとり五十屋(真岡市)




【2007年8月17日とちぎ朝日掲載】









(株)白相酒造 松の井 御用邸

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那珂川町小川715ー2
TEL.0287-96-2015
FAX.0287-96-2016
E-mail:info@shiraso.com
URL:http://www.shiraso.com

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芳醇で軽快な花酵母酒

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 二宮町のイチゴの花から分離した酵母を使用して醸した酒で優良ふるさと食品中央コンクール農林水産省総合食料局長賞を受賞した、白相酒造(創業100年余、白相淑久社長、従業員6人)。補助金制度を活用し、酵母培養設備をすべてそろえるなど分析室の充実を図る。

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 「香味バランスを決めるのは大半が酵母の働きですから、酵母培養を自社で出来なければ、新商品の開発も難しいでしょう」。
 日本酒の芸術、華やかな香りから大吟醸ブームがあった。「酒は大衆から離れてはダメです。美味しくてリーズナブルが一番です。花酵母を使うと、山田錦を使わなくても吟醸酒のような豊かな香りとふくよかな旨味のある酒ができます。花酵母を使うと米に左右されません」と白相社長(57歳)。とちあかねイチゴ酵母仕込みREDの酒質は非公開。「まず飲んでいただきたい」。イチゴの香りプラス色合いもイチゴに似せた。着色料や添加物は一切使用しない純米仕込み。淡いピンク色は米から抽出した。「色合いはポリフェノールの一種のアントシアニンです」。
 花酵母は、東京農業大学短期大学部の中田久保教授の研究室で分離した。花酵母研究会に加盟できるのは、一県一酒蔵が基本。「私は東京農大卒業生ではないので、情報を得てから3年待ちました。県内には、同校卒業の蔵元が大勢います。彼らを差し置いて加盟するわけにもいきませんから。どこの蔵元からも花酵母がほしいと打診がなかった。情報は貴重です。目に見えない細菌と取り組むのですから酒造りは楽しいですよ。ただ、蔵の中にどっぷり入ってしまうと情報が見えなくなりますから、情報収集は欠かせません」。
 イチゴの花酵母は、2年目にして分離できた。白相さん自ら農家を回り花を分けてもらい大学に持ち込んだ。「見えないところで努力しています」。
 「酒は嗜好品ですから、技術論に走りすぎてはいけないと思います。アルコールは頭で飲むのではなく、楽しまなくちゃ、面白くなくちゃいけないと思っています。大吟醸だけが酒ではありません」と白相さん。


【2007年8月3日とちぎ朝日掲載】









天鷹酒造(株) 天鷹

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大田原市蛭畑2166
TEL.0287-98-2107
FAX.0287-98-2108
E-mail tentaka@tentaka.co.jp
http://www.tentaka.co.jp/



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目指すは甘辛しゃん



 全国新酒鑑評会で10年連続入賞、そのうち金賞が6連続の男酒・天鷹酒造(創業大正3年、尾崎宗範社長、従業員18人、製造石数2,000石)。「鑑評会というのは、技術の確認ですから、高い技術力が維持できているということが重要だと思います」という尾崎社長(47歳)=写真。
 「辛口でなければ日本酒ではない」が創業時からの方針だったが、現社長就任から、頑固一徹の辛口から、コクのある辛口へと変わった。目指すは美味しい日本酒の代名詞『甘辛しゃん』。「私がいろいろアイデアを出すと、杜氏は決してイヤだとは言いません。いつも前向きに、どう造れば旨い酒になるか研究、実践してくれます」。
 「焼酎を飲んでいる人からしますと、日本酒度+7ですら甘いと言いますが、酒は米から造りますので米の旨味を生かしながらも辛口で、すっきり喉越しの良い酒を醸しています」。
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 純米酒というカテゴリーすら無かった37年前、「生粋無添加清酒天鷹心(現在の純米吟醸天鷹心)」を世に送り出した。昭和初期からホーロータンクを所有していたことから、吟醸酒醸造も全国で10番以内の早さで技術の蓄積を図ってきた。
 「ワインは皮ごと潰すのに対し、米を削る加工度の高い日本酒は安全な飲み物ですが、より安全な有機無農薬栽培米を使うとどうなるだろう。面白いですね。杜氏と2人で唸りました。他の酒と同じように造っても、やさしい味になります」。栃木酒14号を上三川の農家と直接契約、他社との差別化を図った。
 普通酒も酒造好適米を使用し、65%精米。「造る以上は美味しい酒を造ろうと。説明できない酒は造っていません。リーズナブルで燗して良し、冷やでも良し。決して吟醸だけが酒ではありません」。日本酒のブームはこれからですと穏やかに話す。


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 ●純米大吟醸 天鷹 吟翔(ぎんしょう)720ml・5,250円=写真中=ライチ様の華やかな香りと、さわやかな甘み、ほのかな苦味のバランスとがよく調和した酒。後味はすっきりとした清涼感があり、ふぐ刺し、湯豆腐、カマンベールチーズなどに合う ▽杜氏名…直町昊悦(すぐまち こうえつ)▽出身地…岩手県▽仕込水…那須山系伏流水▽日本酒度…+4▼日本酒の真髄を求めて、特A地区の特上米山田錦のみを使って、厳寒の時期に仕込んだお酒。上槽後は、冷蔵庫で一年以上じっくりと熟成させ、旨みをかもし出す。海外の高級レストランからの引き合いも多い。
 ●純米吟醸 天鷹心(720ml・1470円)=写真右=ナッツ様の落ち着いた柔らかな香り。味わいはスムーズでありながら、膨らみがあり、後味はすっきりとしている。冷やでは、ピザ、ミモレットチーズに。ぬる燗は、マグロの山掛け、さわらの西京焼きなど▽杜氏名…直町昊悦(すぐまち こうえつ)▽出身地…岩手県▽仕込水…那須山系伏流水▽日本酒度…+5▼発売から37年のロングセラー。まだ、「純米」という言葉すら無かった時代より、「米だけの酒」を造りたいと「生粋無添加清酒 天鷹心」として発売。その後、現在の「純米吟醸 天鷹心」となる。「旨みのある辛口」酒として、飲み飽きせず、食中酒としてよい。
 ●有機 純米 天鷹(720ml・1575円)=写真左=辛口でありながら、有機清酒としての優しさを持つ。最初に口中に旨みが拡がり、後に辛くなり、柔らかな舌さわりとなる。厚焼き玉子、厚揚げ、里芋の煮物などでどうぞ▽杜氏名…直町昊悦(すぐまち こうえつ)▽出身地…岩手県▽仕込水…那須山系伏流水▽日本酒度…+5▼栃木県産酒造好適米「とちぎ酒14」を使用した初めての、有機清酒。認定ほ場において収穫前3年以上無農薬・無化学肥料で栽培されたお米を使い、その有機性を保ちながら醸造したお酒。



【2007年7月20日とちぎ朝日掲載】











(株)相良酒造 朝日栄

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株式会社相良酒造
下都賀郡岩舟町大字静3624
TEL.0282-55-2013
FAX.0282-55-2076

甘味生かしたきれいな酒

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 醪(もろみ)にクラシック音楽を聴かせる「音楽醸造法」を県内で初めて取り入れた相良酒造(創業1831年、相良洋行社長、従業員5人)。「リズムが振動エネルギーを与え、酵母菌が活性化して増殖を促すのでしょうね」と話す杜氏兼蔵元の相良さん(50歳)。蔵に入って20年、杜氏になって6年になる。
 同蔵には、越後杜氏が長年造りに来ていた。「いずれ新潟からも杜氏が来なくなる時代が来ると言われていましたし、杜氏が変わる度に酒のデータが一からやり直しになるのも残念に思っていました」と、蔵元自ら杜氏になった。「従業員を育てることも考えましたが、辞められたらゼロになる危険もあるとの助言もありました。自分で造れば、着実にデータを積み重ねていくことができます。今がレベル6程度であったにせよ、いずれは10にも到達することができます」。
 きれいな酒を醸すのが念願だった相良さん。始めの2年は、前の杜氏が残したデータを元に酒を造った。「仕込みの配合を変えたり、米の吸水率を種類や刻々と変わる温度などすべて記録」毎年毎年データを蓄積している。「造りの最中は『家庭内別居だね』と女房に言われています」と苦笑い。
 「美味しかったよ」の言葉が何よりもうれしい。
 「清酒本来の旨味というのは、米の甘さだと思っています。深い丸み、柔らかみがあって初めて日本酒だと思っています。甘口の方が贅沢です。造り手の立場から言いますと、途中で醗酵をストップさせて甘いままで酒にするのですから、効率が悪い。量も減ってしまいますから。辛口にすると経営的には楽です」。米の甘みを生かしたきれいな酒造りを目指す相良さんは、「辛口でなければ酒ではない」というお客さんにはこの話をする。
 杜氏になることを決断させたのは、息子が跡継ぎを表明、東京農大醸造学科に進み、今年は二女も同じ道を選んだ。「子を見れば親が分かるのと同じように、酒を見れば造り手がわかります。子供たちには、酒造りは子育てと同じだよと話しています」。


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 ◆朝日栄吟醸酒ありがとう(1553円)=写真右 上品な吟醸香とスーッとのど元を通り抜け、そのまま心に染み込んでいくような、透き通るような淡麗な味わい ▽杜氏名…相良正行(佐野出身)▽仕込み水…男体山の伏流水▽原料米…麹米、掛米ともに県産五百万石▽精米歩合…50%▽使用酵母…県酵母▽アルコール度数…15%▽日本酒度…+3▽酸度…一▼清水英雄作「ありがとう」の詩に惚れ込み商品化したもので、ラベルを剥がして飾れるように厚手の和紙を使用している
 ◆朝日栄純米吟醸酒吾一(1218円)=写真中 貴婦人のようにたおやかな香りとキリッとした中にも柔らかく丸みのあるおだやかな味わいの酒
 ▽杜氏名…相良正行(佐野出身)▽仕込み水…男体山の伏流水▽原料米…麹米、掛米ともに県産五百万石▽精米歩合…50%▽使用酵母…県酵母▽アルコール度数…15.4%▽日本酒度…+2▽酸度…1.1
 ◆朝日栄原酒生酒初しぼり(1018円)=写真左 飲み口はスッキリと柔らかいが、どっしりとしたコクのある飲みごたえ。冬から春、夏、秋と熟成して味わいの変化が楽しめる ▽杜氏名…相良正行(佐野出身)▽仕込み水…男体山の伏流水▽原料米…麹米(五百万石)、掛米(朝日の夢)▽精米歩合…65%▽使用酵母…協会7号▽アルコール度数…19%▽日本酒度…+4▽酸度…1.6

ありがとう
つらいことが おこると 感謝するんです
これでまた強くなれると ありがとう
悲しいことがおこると 感謝するんです
これで人の悲しみがよくわかると ありがとう
ピンチになると感謝するんです
これでもっとたくましくなれると ありがとう
つらいことも悲しいこともピンチものりこえて 生きることが人生だといいきかせるのです自分自身に
そうすると ふっと楽になって人生がとても光り輝いてくるんです
ピンチはチャンスだ 人生はドラマだ
人生がとてもすてきにすばらしく よりいっそう光り輝きだすんです
ますます光り輝く人生を ありがとうの心と共に
       詩・清水英雄


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【2007年6月15日とちぎ朝日掲載】














池島酒造(株) 池錦 酒聖

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大田原市下石上1227
TEL.0287-29-0011
FAX.0287-29-1938
http://www.ikenishiki.co.jp

造り手の思い生かす酒


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 昭和27年から四年連続で全国新酒鑑評会で金賞を受賞するなど、吟醸造りをいち早く取り入れ、酒造りの研究を始めた池島酒造(創業明治40年、池嶋英哲社長、蔵人5人、製造石数300)。「今でこそ大吟醸は売れますが、当時は飲む時代ではありませんでしたから、あくまでも酒造技術の確立を目的に醸していました」と池嶋社長。
 昨年は、関東信越国税局酒類鑑評会優秀賞。今年は全国新酒鑑評会入賞を杜氏になって4年目の臼井茂さん(48歳、大田原出身)が獲得した。越後杜氏のもとで20数年修行を積んだ。臼井さんの名刺には、『那須杜氏』の肩書きがある。「親方の下で手伝うのと、自分で一から造るのでは勝手が違い、初めての麹
造りの時は一睡もできませんでした。経験を積み慣れました」と言いながらも、昔ながらの造りを実践する同蔵では、2時間に一度は麹室に行き30分程麹の世話をする。
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【池島酒造提供写真】

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【池島酒造提供写真】

 「勘に頼って造ると旨い酒はできません。詳細なデータの積み重ねが大切です」と分厚い帳簿を手に臼井杜氏。受賞時のデータを元に造ると旨い酒ができる可能性は高い。
 機械を導入し省力化が進む中、手づくりにこだわり「造り手の思いが伝わる酒造りに喜びと幸せを感じています」と池嶋社長。
 初代は、箒川の伏流水に惚れ込み、新潟から移り住み蔵を築いた越後杜氏だったこともあり、創業時から「主人自ら蔵に入るべし」を社訓に代々受け継いで来た。

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■純米「質素堅実」(1,970円)=写真右 米の旨味としっかりとした酸味のある酒で、アルコールを添加していないのに辛口に感じる。揚げ物、焼き肉などこってりした物に良く合う。▽原料米…麹米、掛米ともに五百万石▽精米歩合…65%▽使用酵母…701▽アルコール度数…14~14.9%▽日本酒度…+4▽酸度…1.8▼推奨の店…大田原の俵寿司
■大吟醸「人生我慢」(3,675円)=写真中 自分で育てる「大吟醸古酒」。3年、5年と我慢すればこそ得られる、琥珀色の輝き、馥郁(ふくいく)たる香り、そして丸みを帯びた味。肉料理との相性の良さに驚く味 ▽杜氏…臼井茂(大田原市)▽仕込み水…那須連山の伏流水▽原料米…麹米、掛米ともに山田錦▽精米歩合…40%▽使用酵母…栃木県酵母▽アルコール度数…17~17.9%▽日本酒度…+3▽酸度…1.4
■純米吟醸池錦「酒聖」(2,957円)=写真左 日本酒の最高峰を造ることを目指し命名。甘味をベースにしっかりとした旨味がある。ほんのりと果実香が立つが、香りよりも味に重きを置き、最後まで飲み飽きしない。アイソの魚田(焼いて山椒みそをつける)、アユの塩焼き、シマドジョウの玉子とじなど魚料理によく合う。 ▽杜氏…臼井茂(大田原市)▽仕込み水…那須連山の伏流水▽原料米…麹米、掛米ともに美山錦▽精米歩合…58%▽使用酵母…明利 小川酵母▽アルコール度数…15~15.9%▽日本酒度…+3▽酸度…1.4▼推奨の店…居酒屋「存じやす」(宇都宮)、「聖」(宇都宮)、宝寿司(那須塩原市)



【2007年6月1日とちぎ朝日掲載】












西堀酒造(株) 若盛


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小山市粟宮1452
TEL.0285-45-0035
FAX.0285-45-1628

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全国鑑評会で3連続金



 「純米酒でありながら、後味スッキリの切れのある酒を醸せるのはウチの技術です」と胸を張る西堀酒造(創業明治五年、西堀和男社長=写真上=、従業員9人、冬場12人、製造石数1,000強)5代目の西堀社長。
 技術力を証明する鑑評会の受賞歴も多く、5年前に越後杜氏から南部杜氏(継枝邑一さん)に変わってからも、蔵元の最高の栄誉とも言われている全国新酒鑑評会で平成17年、18年と2年連続金賞受賞の快挙。他にも関東信越国税局酒類鑑評会金賞(平成14年)、栃木県清酒鑑評会知事賞(平成14年、15年、17年、18年)、南部杜氏鑑評会仙台国税局長賞・優等賞(平成18年)?と確かな酒造技術を保有する。
 昭和60年代、全製造量の九割を牛丼の吉野屋に卸していた同社は、「他社が東京進出を狙っていた時代、逆に県内市場向けのブランド『門外不出』を造り、販路も確立しました」。淡麗がブームだったころ、濃醇な純米酒を造り続け、「今でこそ旨いと言っていただいていますが、当初は味が濃すぎると言われたものです」。門外不出は、全製造量の七割を占め、県内でほとんど完売。アルコールを添加する吟醸酒系は『奥座敷』の銘柄で販売。
 「地産地消の高まりもあり、できる限り地元の米を使っていますが、旨い酒を造ることが前提にありますので、全量地元で調達するわけにはいきません」。仕込み水は、2本ある自家井戸水(日光山系の伏流水)を毎年検査し、より良い井戸を選び、水を活性化させる磁気水を使用。
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 特別な設備を持たない同蔵は、「自然と人の力と技」で全国区で認知されている。
 平成7年に無料試飲ができるアンテナショップ=写真上=を開設。年間15,000人以上が訪れる。「お客様からの要望は商品開発に即盛り込みます。ショップで人気のあるものは、市場でも人気が高いです」と訪問客のデータを活用、市場動向にも敏感な5代目。

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 ■若盛 栃木14号 純米無濾過瓶燗火入れ=写真右 軽い口当たりからしっかりとした米の旨味と風味が満喫できる。中華風の食材に合う。酒をご飯代わりに ▽杜氏名…継枝邑一(岩手)▽仕込み水…自家井戸水▽原料米…麹米、掛米ともに栃木14号▽精米歩合…麹米、掛米ともに70%▽使用酵母…協会9号▽アルコール度数…15%▽日本酒度…+2▽酸度…1.8▼酒の特徴を生かすため、無濾過の状態で瓶に詰めたこだわりの酒
 ■若盛 特別純米 門外不出=写真中 口中に柔らかな味わいと甘味が広がりややメロン風味がただよう。後味はさっぱりとし、キレの良い味わいいがある。天ぷらや肉料理などやや濃いめの料理に合う。 ▽杜氏名…継枝邑一(岩手)▽仕込み水…自家井戸水▽原料米…麹米、掛米ともに栃木県産の五百万石▽精米歩合…麹米、掛米ともに55%▽使用酵母…協会9号▽アルコール度数…15%▽日本酒度…+4▽酸度…1.7▼地元の人に飲んでいただきたく命名した酒。栃木県内でほとんど完売
 ■若盛 吟醸 奥座敷=写真左 軽快な味わいと、ふっくらとしたまろやかさ、ややリンゴ香のような香りがありスルリと飲める酒。刺身や野菜料理に ▽杜氏名…継枝邑一(岩手)▽仕込み水…自家井戸水▽原料米…麹米、掛米ともに山田錦▽精米歩合…麹米50%、掛米55%▽使用酵母…協会9号▽アルコール度数…15%▽日本酒度…+4▽酸度…1.5

【 2007年5月18日とちぎ朝日掲載】











(合資)小島酒蔵店 新郎 かんなびの里

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塩谷町大字風見1185
TEL.0287-46-0903
FAX.0287-46-0831

縁を取り持つ酒は心


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 30年前から「吟醸蔵」へと方向転換した小島酒造店(創業明治初年、小島治社長、家族3人)では、普通酒より特定名称酒の消費が多く、7割を占める。中でも現社長で製造責任者の小島治さん(56歳)が企画立案した「かんなびの里本醸造」のみでも4割を占める。
 45年間務めた越後杜氏の遣水一郎さんが高齢のため引退。今年から家族3人で酒造りから瓶詰め、出荷と全工程を行うことになった。東京農大醸造学科を卒業後京都の酒造会社で修行。蔵に戻った際「季節労働者としての杜氏を迎え入れるのは遣水さんで最後にしようと思っていました。零細企業であるにもかかわらず、家族経営の酒造会社が無いことが不思議でした」。遣水杜氏の下、関信越酒類鑑評会でかんなびの里は受賞を果たしている。30年もの間、酒造りを現場で習い、今年から小島さんの「かんなびの里」が蔵を出る。
 一人息子の拓さん(26歳)も東京農大醸造学科に学び新潟の酒蔵緑川で修行、3年前に蔵に戻った。「親父が築いて来た味を柱に、自分の思いを重ねていきたい。酒は人と人を結ぶアイテムとして大切なものです。造り手の心、飲んでいただく方の心を大切に醸していければ」と心強い後継者。
 淡麗辛口を探求し続ける小島酒造店の味は「ただ辛くてサラサラ飲める酒ではなく、米の旨味を最大限に生かし、飲み口まろやかで後味すっきりの酒が目標です」と小島さん。淡麗辛口に丸みを持たせるため、生酒以外は暑い夏を越し熟成させ秋に蔵から出す。常温で熟成すると酒はヒネてしまい、旨味より雑味感が増える。拓さんが戻ってからは、冷水機を使いタンクごと冷やし夏でも12度に抑え、酒にまろやかさと旨味を出すことに成功、製造した酒は完売を続けている。

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【まだ未使用の半地下の貯蔵庫。】

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 ■かんなびの里 本醸造  すっきりとした爽やかな喉越し後ほんのり甘くどっしりとした重みのある味で、魚、豆腐、漬け物、天ぷらなど日本古来の料理によく合う ▽製造責任者…小島治▽仕込み水…鬼怒川水系▽原料米…麹米(県産五百万石)、掛米(一般米)▽精米歩合…60%と55%の混合▽使用酵母…県酵母デルター▽アルコール度数…15%▽日本酒度…+3▽酸度…1.3
 ■吟醸 大地豊醸  きれいですっと入ってしまう程の喉越しの良さとともに深みのある甘みを爽やかに感じる初夏の酒。塩ゆでのタケノコ、インゲン、大豆、冷や奴、おひたし、鮎の塩焼き、ナスやキュウリの漬け物などさっぱりした和食によく合う ▽製造責任者…小島治▽仕込み水…鬼怒川水系▽原料米…麹米、掛米ともに県産五百万石▽精米歩合…55%▽使用酵母…協会14号▽アルコール度数…15%▽日本酒度…+3▽酸度…1.4 6月から8月の限定販売
 ■純米吟醸 大地豊醸 きれいですっと入ってしまう喉越しの良さの中にコクのある旨味とまろやかさをほのかに感じる実りの味。ステーキや焼き肉など脂っこい料理にも合う ▽製造責任者…小島治▽仕込み水…鬼怒川水系▽原料米…麹米、掛米ともに県産五百万石▽精米歩合…55%▽使用酵母…協会10号▽アルコール度数…15%▽日本酒度…+1▽酸度…1.5 11月から1月の限定販売 大地豊醸は拓さんの企画商品

【 2007年5月4日とちぎ朝日掲載】










大平酒造(株) 黒龍

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大平町大字下皆川747
TEL.0282-22-0111
FAX.0282-43-2003

木槽搾りの通好み酒


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 酒本来の風味が生きる昔ながらの木槽(きぶね)搾りを続ける大平酒造(創業明治元年、林由多可社長=写真左、従業員1人)。県内一小さな同蔵は、新潟の蔵人上がりの番頭・大塚昌二さん(74歳)とたった2人ですべての工程を手づくりで行う。
 社長兼製造責任者の林さん(50歳)は、造りを引き継ぎ15年目になる。33歳の時、先代が急死。「酒は好きでしたが、造り方も分からなければ経営も素人でしたから悩みました」と当時を振り返る。跡継ぎを決意してから、醸造試験所で酒造りの基礎を学んだ。当時は、新潟から毎年杜氏が造りに来ていた。親方の下で造りの実際を学び、「もう大丈夫だろう」と言われるまでに3年の月日を要した。今では、越後杜氏の伝統的技法を継承、発展させ、手づくりで丁寧な酒造りに励む。
 「吟醸酒は造らない」同蔵では、米の旨味がとろりと広がる、口当たりの良い濃醇旨口のおり酒やしぼりたて生酒、ブランデーに近い香りで「酒通から絶賛されている」23年物の古酒など、個性的な酒を展開。季節限定酒以外は、1年から2年の熟成をかけてから出荷する。県内でも有数の超軟水が口当たりの良い柔らかな酒造りを手伝っている。

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火入れを行う番頭さん】


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 ◆黒龍特別純米しぼりたて生酒=写真中 手づくりで丁寧に低温で仕込んだ特別純米しぼりたて生酒。和食全般の食中酒としてぴったり ▽製造責任者…林由多可(栃木県)▽仕込み水…自家用地下水(硬度1.5の軟水)▽原料米…麹米(兵庫県産山田錦)、掛米(五百万石)▽精米歩合…52.5%▽使用酵母…協会9号▽アルコール度数…18.5%▽日本酒度…+8
 ◆黒龍本醸造辛口=写真右 膨らみがありながらスッキリした味わい。料理を選ばない食中酒 ▽製造責任者…林由多可(栃木県)▽仕込み水…自家用地下水(硬度1.5の軟水)▽原料米…五百万石▽精米歩合…60%▽使用酵母…協会7号▽アルコール度数…15.7%▽日本酒度…+4
 ◆黒龍秘蔵古酒=写真左 長期貯蔵の熟成酒(84年物)。古酒ならではの独特の風味とコクを堪能できる通好みの逸品。和食全般の食中酒としてどうぞ ▽製造責任者…林由多可(栃木県)▽仕込み水…自家用地下水(硬度1.5の軟水)▽アルコール度数…19.5%▽日本酒度…+5


【2007年4月20日とちぎ朝日掲載】












(株)阿部酒造店 茂木百騎 千代の白菊

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茂木町茂木132
TEL.0285-63-0053
FAX.0285-63-08112
http://www.abesyuzou.dnsalias.com/

町おこし兼ね酒造り

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 日本棚田百選に認定されている茂木の棚田で収穫される酒造好適米の五百万石を全量使用した「純米吟醸棚田の雫」を醸すもう1つの酒蔵・阿部酒造店(創業大正4年創業、阿部武史社長、従業員5人=冬場7人、40,000�製造)。茂木棚田協議会が町とメーカーを動かし三者一体となって作り上げた話題の日本酒は、同町内の島崎泉治商店とともに、町おこしの一環として醸し始めた。
 瓶とラベルと使用米は同じだが、王冠が阿部酒造店がブルーに対し島崎泉治商店はホワイト。仕込み水のほか、島崎泉治商店が和田和司越後杜氏に対し、阿部酒造店は吉田省一郎南部杜氏が務め、使用酵母も明利310号と県TF、日本酒度も+-0と+2、酸度、アルコール度数も違い、飲み比べるのも楽しい一品に仕上がっている。両杜氏とも平成18酒造年度全国新酒鑑評会で入賞を果たしている。
 阿部酒造店では、特定名称酒より普通酒の方が7対3で多く、地元ファンは創業時から変わらない「千代の白菊」を支持している。

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 当主3代続いて「酒が体質的に合わないので、飲んで酔える人がうらやましい」と話す阿部倫哉さん(29歳)。昭和音楽大学作曲学科を卒業後コンピュータープログラマーとして4年会社勤めをし、3年前に蔵に戻った。造りを手伝い2年目。「親方と頭の下で手伝う程度ですので、酒づくりの醍醐味まではまだ感じられません」。社長の阿部武史さん(60歳)=写真右=も町長を務めていた時代、現場から離れていたこともあり、「造りは杜氏にすべて任せています」と話す。
 町おこしの血は息子の倫哉さんにも受け継がれ、「町の人に珍しい音楽を聞いてもらえれば」と年1回、酒蔵コンサートを開いている。今年はポップスナイトと題して22日に開かれる。

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 ?千代の白菊(吟醸生貯蔵酒)=写真右 新鮮な野菜などに味噌、醤油、塩などを付けた味は生酒の美味しさを倍加させます。フルーティーな香りと爽やかな喉越し。特に暑い季節にはお勧めの一品。 ▽杜氏名…吉田省一郎(岩手県)▽仕込み水…自家井水▽原料米…麹米、掛米ともに五百万石▽精米歩合…55%▽使用酵母…県酵母TF▽アルコール度数…14.5%▽日本酒度…プラス2▽酸度…1.2
 ?茂木百騎(特別本醸造酒)=写真中 新鮮な野菜などを使用したさっぱりした肴に合う。喉越しすっきりタイプながら味の幅があり、冷やでも燗でも楽しめる酒。 ▽杜氏名…吉田省一郎(岩手県)▽仕込み水…自家井水▽原料米…麹米、掛米ともに栃酒14号▽精米歩合…58%▽使用酵母…協会901▽アルコール度数…15.3%▽日本酒度…プラス1▽酸度…1
?棚田の雫(純米吟醸酒)=写真左 米本来の味わいと深みを感じ、日本酒の上質な旨さを直詰めした極上の一品。 ▽杜氏名…吉田省一郎(岩手県)▽仕込み水…自家井水▽原料米…麹米、掛米ともに茂木産五百万石▽精米歩合…55%▽使用酵母…県酵母TF▽アルコール度数…15.5%▽日本酒度…プラス2▽酸度…1.2



【2007年9月7日とちぎ朝日掲載】


















鳳鸞酒造(株) 鳳凰 那須 花籠

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大田原市住吉町1-1-28
TEL.0287-22-2239
FAX.0287-22-2119

喉越しすっきり正統派

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 製造量の半分は那須、塩原、鬼怒川など観光地に卸す戦略をいち早く取り入れてきた鳳鸞酒造(創業明治14年、脇村光彦社長=写真、製造要員5人、製造石数1500石)。「晩酌酒として親しまれているのは一部の蔵元で、地酒の販路は贈答が大半を占めるのが現実です。最近は県南の酒造メーカーも那須に進出してくるなど競争が激化、厳しくなりました」と脇村社長。
 関東圏内で一番早く自動精米機を導入、冬場の繁忙期には精米担当を一人付けてフル稼働する。「大吟醸用に米を精米するには72時間掛かります。悪い米を使用しますと高精米に耐えきれず使い物になりませんから、良い米を使わないとだめですね」。
 同社の主力商品は「低温熟成」。春先造った酒を常温で保存した場合、酒質は劣化しひねた酒になる。同社では、35年前からタンクごと大型冷蔵庫で保存。真夏でも七度。零度以下で保存する吟醸用冷凍庫も敷地内にある。「個人的に好きではないので」古酒は造らない。低温熟成は、春先に造り秋から出荷を始め、1年間で販売する。
 昨年までは南部杜氏が造りを行っていたが、今年の10月から地元採用の石井浩さん(35歳)が仕切る。「杜氏に育てようと思っていた人間です。親方の元で11年働いてきましたが、手伝うのと実際造るのでは違います。麹を育てるのが一番難しいですからね。普通酒はもう問題なく造れますから心配していません。鑑評会で入賞できるような、2年目からは良い酒ができるのではないかと期待しています。今年は勉強の年、失敗してもいいから頑張れるように、給与面でもバックアップしてあげなきゃいけませんしね」と船出を見守る。
 大吟醸造りの際は毎年、麹の世話のために会社で寝泊まりする情熱の石井さん。まずは、鳳鸞の味を守ることから始める。
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 ?大吟醸「那須」=写真右 大吟醸酒ならではの華やかな果実のような香りと気品ある繊細な味わい ▽杜氏名…石井浩(栃木県)▽仕込み水…箒川伏流水▽原料米…麹米(山田錦)、掛米(美山錦)▽精米歩合…47%▽使用酵母…協会9号▽アルコール度数…15.8%▽日本酒度…プラス4▽酸度…1.1▼蔵元推奨の店…田中酒店(那須)
 低温熟成「鳳鸞」=写真中 冷蔵貯蔵庫で1年間じっくり低温熟成させたクセのない自然な旨さと熟成のまろやかさが一体となった味わい ▽杜氏名…石井浩(栃木県)▽仕込み水…箒川伏流水▽原料米…麹米(山田錦)、掛米(美山錦)▽精米歩合…66%▽使用酵母…協会7号▽アルコール度数…15.4%▽日本酒度…プラス1▽酸度…1.4▼蔵元推奨の店…小高酒店(親園)
 大吟醸「那須自慢」=写真左 豊かな香りと淡麗な味わい ▽杜氏名…石井浩(栃木県)▽仕込み水…箒川伏流水▽原料米…麹米(美山錦)、掛米(美山錦)▽精米歩合…47%▽使用酵母…協会9号▽アルコール度数…15.8%▽日本酒度…プラス2▽酸度…1.3▼蔵元推奨の店…千本松牧場
 いずれも日本料理によく合う。

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【2007年9月21日鳳鸞酒造掲載】
















小林酒造(株) 鳳凰美田 美田鶴

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小山市卒島743-1
TEL.0285-37-0005
FAX0285-37-0807

日本酒文化守り伝える

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 普通酒も本醸造酒も造らない、県内唯一の吟醸蔵で全国の地酒ファンから600石)。同社専務の小林正樹さん(38歳)=写真上=が、東京農大卒後国税庁醸造試験所で2年の研修を経て蔵に戻った14年前、同社は、「家族がどうにか食べられる程度」で製造石数も150石の小蔵だった。生き残りをかけ蔵改革を実施。「手間を惜しまず良い酒を造っていきますと必然的に吟醸造りになりましたし、一生懸命造っていますと、酒が縁をつないでくれて信頼できる酒販店にも恵まれました」と、小さな蔵でありながらも店頭販売はせず、完全に住み分けを図り、取り扱い酒販店を全店把握する数少ないメーカーに成長した。

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洗米を終え、浸漬させた麹米の五百万石を蒸し始める

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蒸し上がった米を桶に入れ麹室へと運ぶ


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ムロ(麹室)で蒸し上がった米を広げ、ほぐし

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麹菌を米にかけていく。

 「少し少しの手間を惜しまず手をかけると味にも反映されます」。幻の酒米・亀の尾をはじめとする酒米づくりを手掛けたのは10年前から。最新鋭の分析室を持ち酵母も自社培養。酒の搾りは完全手作業。もろみを木綿のさらし布に包み佐瀬式の槽で丁寧に搾る。搾った酒は劣化を防ぐため、即瓶詰めを行い冷蔵庫に保管する。
 2年前の1月、大吟醸造りが終わったころ秋田から来ていた杜氏が病気で倒れた。「造り手が変わると酒質は明らかに変わります」それでも今年の全国新酒鑑評会で金賞受賞を果たしている。造り手は、親方の大関文雄さん(58歳)=写真上、専務とその奥さんの3人が酒造りに精通。
 「日本酒の品質は飛躍的に向上しているにもかかわらずシェアは7%。20年以内に右肩上がりにできるかどうかが業界全体の勝負どころ」。今年7月、手づくりの日本酒文化を伝承・育成・発信していくことを目的に結成した全国の地酒蔵元20社、酒販店43社で組織する『和醸和楽』にも参加。衰退ぎみの業界の底上げにも尽力している。


 【取り扱い酒販店】▽勇屋(小山市乙女、TEL0285・45・0121)▽杉田屋酒店(小山市駅東通り、TEL0285・22・3804▽中野屋酒店(小山市城山町、TEL0285・25・0737)▽松本酒店(小山市羽川、TEL0285・23・6527)▽伊勢元酒店(宇都宮市峰TEL028・634・9550)▽エビスヤ酒店(宇都宮市塙田、TEL028・622・4513)▽柏次商店(宇都宮市御幸町、TEL028・661・0049)▽菊地酒店(宇都宮市大谷町、TEL028・652・0105)▽澤田屋酒店(宇都宮市簗瀬、TEL028・633・2796▽鈴木酒店(宇都宮市新里町、TEL028・652・0068)▽宇東関口酒店(宇都宮市下栗町、TEL028・656・1084)▽マルフジ酒店(宇都宮市細谷町、TEL028・621・5181)▽目加田酒店(宇都宮市一番町、TEL028・636・4433)▽吉村酒店(宇都宮市星が丘、TEL028・622・5581)▽淀川(宇都宮市睦町、TEL028・633・4887)▽大和田酒店(栃木市祝町、TEL0282・22・1417)▽大和屋(栃木市吹上町、TEL0282・31・1716)▽山本酒店(栃木市万町、TEL0282・22・1389)▽おかざき酒店(足利市朝倉町、TEL0284・71・1502)▽大黒屋(足利市通、TEL0284・21・2714)▽武井酒店(足利市利保町、TEL0284・41・6513▽岡田酒店(益子町益子、?0285・72・2067)▽柏崎酒店(下野市下古山、TEL0285・53・19191)▽坂本酒店(下野市仁良川、TEL0285・48・1805)▽上岡酒店(佐野市相生町、TEL0283・22・0895)▽野代酒店(佐野市久保町、TEL0283・22・2067)▽亀屋(大田原市中央、TEL0287・23・2241)▽山木屋清水商店(大田原市小船渡、TEL0287・54・2288)▽国本屋酒店(上三川町上蒲生、TEL0285・56・2067)▽黒崎商店(鹿沼市上材木町、TEL0289・62・2764)▽澤屋酒店(鹿沼市貝島町、TEL0289・62・2578)▽嶋田屋(鹿沼市西茂呂、TEL0289・62・2590)▽下桝本商店(日光市松原町、TEL0288・54・0162)▽田井酒店(日光市藤原、TEL0288・78・0121)▽松本酒店(日光市清原町、TEL0288・21・2926)▽新亀屋(那須烏山市中央、TEL0287・82・2008)▽関口本店(真岡市荒町、TEL0285・82・2255)▽滝沢酒店(さくら市氏家、TEL0286・82・2228)▽月井商店(那須町湯本、TEL0287・76・2825)▽増田屋本店(壬生町中央町、TEL0282・82・0161)▽丸天高瀬商店(塩谷町玉生、TEL0287・45・0022)






【2007年10月5日とちぎ朝日掲載】
















目加田商店

めかたさん
店内真ん中には年代物の佐瀬式の槽(ふね)を配置。中には酒器なども展示
=宇都宮市一番町の目加田商店で



栃木酒応援は専門店の使命

 栃木の日本酒に興味のある酒販店16社が集まり、平成14年に結成した酒々楽(ささら)会。同会は、定期的な勉強会を開くとともに、平成17年から「栃木の美酒と出会う旅」とした集客600人規模の酒の会を毎年開催している。代表を務める目加田功士(めかたたかし)さん(52歳)は、10年前に栃木の地酒応援団を立ち上げ、地元ホテルを会場に北海道の酒と栃木の酒、甲信越の酒と栃木の酒等といった飲み比べ試飲会を活発に行ってきた。「新潟の酒は旨いけれど、栃木の酒はちょっと」と二の足を踏んでいた消費者の意識改革が狙いだった。全国の有名銘柄を百種類ほど集め精力的に行った。
 今年の全国新酒鑑評会では、金賞受賞率が全国3位とレベルの高い美酒揃いに成長した栃木酒。その高い技術力の構築には「若い蔵元たちのガラス張りの研修会が結実したもの」と話す。「仕込み情報を互いに交換。ここまで蔵元同士が情報を出し合い、研究している県はないと思います。ですから、飛躍的な技術革新につながっているのでしょう」と、下野杜氏の活動に目を細める。
 前任の県酒造組合事務長から「これからの栃木の酒をどうしよう」と相談を受けた際、事務所に隣接してスペースがあいていたため、ワンドリンクで酒を飲ませるアンテナショップを作ったらどうかと提案。県酒造組合からも快諾。現在の酒々楽が生まれた。
 「製造元の酒蔵だけがどんなに良い酒を醸しても、発展することは難しいと思います。地酒を応援するには、酒販店自身が栃木酒への認識を深めなければ」と、5年前から2カ月に一度くらいの頻度で蔵元を呼び、酒の勉強会を定期的に開催してきた。「蔵元の趣旨や個性を知ることも大切なことです」。
 酒々楽会発足言い出しっぺの目加田さん。「県内全域までは難しいので、宇都宮の小売酒販部青年部を中心に賛同者を募りました。小売店も後継者不足といった問題を抱えていますから」当初より会員酒販店は減った。
 目加田さんが地酒に取り組み始めたとき、新潟の酒が黄金時代だった。「全国の有名銘柄を店頭に並べ売り上げを確保したいというのも理解できますが、栃木の蔵元の思いも分かるし置かれている状況も分かりますから、地元の酒を発信するのが基本だと思っています。地元の酒は、自分の中で中心において考えています。来客者にはまず栃木酒をおすすめします。地元の酒屋は、地元の酒を中心におき、全国の酒もありますよっていうのが、地酒ショップだと思いますし専門店の使命だと思っています」。目加田商店には、栃木酒が半分以上を占める。
 「10年前までは、お客さんの大半は『栃木の酒はちょっとね』と言っていたのが今では逆転し、お土産に栃木の地酒を持っていきたい」と激増した。
 自ら日本酒ファンで、一日に2合程度飲む。利酒師でもある目加田さんは、栃木県代表として全国選手権にも出場。
 栃木酒の魅力は「硬水、軟水と水系がバラエティー豊かなことから、同じ県内の酒でありながら味に幅があることです」。
 発足して10年の栃木の地酒応援団(20人加盟)では、今も年に2、3回は集まり勉強会を継続。「当初は、私との温度差もありましたが、毎年レベルが上がってくるのが分かりうれしくなります」。今年の秋、自ら蔵元を訪ね歩き取材、酒販店の業界紙では「有望四銘柄・蔵元杜氏」を5ページにわたって紹介。多方面から栃木酒を応援している。

 ■酒々楽会会員酒販店 ◇猪瀬酒店(上三川町上蒲生☎0285・56・2112◇伊勢元酒店(宇都宮市峰☎028・634・9550)◇近清大野商店(宇都宮市本町☎028・622・3450)◇駒村商店(宇都宮市御幸町☎028・661・2727)◇越後屋(宇都宮市松原☎028・622・3764)◇すずめや酒店(宇都宮市雀の宮☎028・654・1310)◇鈴木酒店(宇都宮市新里☎028・652・0068)◇雀宮虎屋酒店(宇都宮市南高砂☎028・653・0157◇田村酒店(宇都宮市今宮☎028・684・5651)◇きくや酒店(宇都宮市新里☎028・652・2960◇金子酒店(宇都宮市兵庫塚☎028・653・5527)◇リカーショップ松本(宇都宮市南大通り☎028・633・4537)◇目加田商店(宇都宮市一番町☎028・636・4433)◇一里屋支店(宇都宮市双葉☎028・658・0704)◇吉川商店(宇都宮市西☎028・633・2973)◇押久保酒店(宇都宮市高砂☎028・653・0243)

【2007年10月19日とちぎ朝日掲載】










栃木県産業技術センター食品技術部微生物応用研究室  岡本竹己さん

岡本さんとおばちゃん
現役の栄養士で、県内酒造メーカーで六年間酵母の分析・培養を行ってきた小池圭子さん(左)が助手を務める


美酒支える県酵母

 元来日本酒には、米の持つ地味な香りしかなく、ワインのようなフルーティーな香りはない。香りを持つ吟醸酒を誕生させた背景には、日本醸造協会の協会系酵母7号、9号があった。
 酵母は、酒造りの主原料ではないが、酒の味や香り、質を決定づける重要な鍵を握る。明治以前は、麹と水を合わせる過程において空気中に自然に存在する酵母を取り込むなど、酒蔵に住み着いた「蔵つき酵母」に頼っていたため、株が一定せず科学的再現性が無く、醸造される酒は品質が安定しなかった。
 明治44年、日本醸造協会は、全国新酒鑑評会などで優秀と評価された酵母を採取し、純粋培養し頒布。昭和50年代に吟醸酒が消費者に受け入れられると、協会酵母のほかにも高エステル生成酵母、リンゴ酸高生産性多産酵母といった高い香りを出す酵母が多数バイオ研究所や大学等で開発された。平成に入り静岡酵母や山形酵母なども高く評価され、栃木県産業技術センター食品技術部微生物応用研究室でも昭和60年代、関東圏内でいち早く酵母研究に着手した。
 20年前、同研究室に入って3年目だった岡本竹己さん(45歳)は、県内蔵元から酵母開発の要望が強かったことから、独自性を出し全国新酒鑑評会での入賞率を上げることを目標に研究を始めた。
 「古い蔵には独自の酵母が住んでいる」と当たりをつけ、蔵の柱を削ったり酒蔵内にいくつも酵母の入っていない酒毋(できあがった麹、何も手をつけていない蒸し米、水が一緒になったもの)のフラスコを設置し蔵に住み着いている酵母菌が飛び込んでくるのを待ち、そこからわき出したものなどを試験所に持ってきては分離、選抜し、酒造りに使える酵母を選んでいく方法と、世代交代を繰り返すうちに生まれた突然変異種を採取するなどして選抜。5年の歳月を掛け最終的には20種類ほどの酵母菌に絞った。20種類の酵母菌を使用し、県内の酒蔵で実際に酒を造り、さらに振るいに掛け、現在2種類が残っている。

酵母だよ


 「単純な選抜では限界がありますので、細胞融合などで少し香りを高くするなど特徴を付けました」。現時点では、T―デルタ(平成元年に県内醪から分離、9号系、泡有り、酢酸イソアミル(エステル)の軽い甘い吟醸香、バナナ香)、T―1(T―デルタの変異種、カプロン酸エチル、生産性高い、酸生成やや多い、リンゴ香)、T―S(昭和六十三年に県内蔵元より分離後泡無し可、酸生成少ない、キレ早い、エステル系香り、純米酒向き)、T―F(T―Sの変異株、カプロン酸エチル。生産性極めて高い、後半のキレにやや不安あり、生成酒の低温管理が絶対不可欠)の四種類を培養、頒布している。
 県内蔵元は零細企業が多く、分析・培養設備が整っているのはわずか7、8社のみで、大多数の蔵元は同研究室を利用、酵母菌のブレンドなどで自らオリジナル酵母の研究を行う社もあり、岡本さんは技術指導及び支援を行っている。

〈酒楽考おわり〉




【2007年12月7日とちぎ朝日掲載】




 




2006年6月16日から2007年12月7日まで、とちぎ朝日1面に連載されたものです。
日本酒を愛する野田が企画、取材、撮影、執筆、編集、制作まで全てを担当。
栃木県内の自社醸造酒蔵2社から取材拒否を受けたのは心残りですが、日本酒ファンが
少し増えたかしら…なんて自分を褒めつつ、今夜も栃木酒で乾杯!









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Author:のだたけし
過去に掲載されている人たちは野田が新聞記者時代に取材した人達です。すべての人が現在進行形(ing)で活躍しています。「それぞれのing」は、そんな人たちのちょっとだけ前のお話ですが、記事はそのまま情報として掲載しておきます。これからブログは、日記のやうに、、気ままに使わせていただきます。

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