波多江正明さん(陶器、墨絵作家)
2009.10.22
16:50:52

障害抱えながら制作、日光で初めての個展
てんかんと知的障害を持つペンションはじめのいっぽ(波多江定夫代表、日光市所野1541―2371、TEL0288・53・2122)の長男・正明さん(33歳)の陶芸と墨絵による初めての個展が日光市のプラチナホームいまいち(日光街道沿い、今市商店街のスーパーかましん斜め前)で31日まで開かれている。

「生きていく上で楽しいことさせてあげたい」
やさしさが魅力の作風





埼玉県日高市から「家族でできる仕事を求め」日光市に来たのは16年前。正明さんが17歳のときだ。11歳から16歳までの5年間、日高市内の陶芸教室に通っていた。当時の教室の先生は、「プロとしてやっていけなければ意味が無い」と、正明さんの作品をことごとく壊し感性を握り潰してきた。
「指を動かすと脳内に良い影響を与える」と始めた陶芸だったが、正明さんはストレスからふさぎ込むようになった。
小学校、中学校とも普通学級で学びながら、科目によって特殊学級に籍を置いていた。数字は4までしか数えられず、高校進学が困難なため調理師養成学校に進学した。学校には「いじめっ子がいて」悲惨な1年を過ごした。
正明さんの障害は1級。ペンションの仕事を手伝うようになり、箸を並べる際に16まで数えられるようになった。
ペンションはじめのいっぽとの出合いは、家族でできる仕事を探していた際、たまたま泊まった宿だった。当時のオーナーから、「体調を崩したので、欲しい人がいたら売却したい」と言われ、子ども3人が生まれ育った埼玉の築15年、2900万円で購入した家が3900万円で売れ、トントン拍子に話が決まった。
ペンションを始めた当初は、「障害のある人が料理を運ぶのは嫌だ」など、心ない客もいたが、ホームページで正明さんの紹介記事を掲載し、「逆に理解のある客が増えた」と喜ぶ母・広美さん。正明さんも自作の酒器などを通し、お客さんと会話を楽しみ和気あいあいと育ってきた。
「マツザキさんが、もう少し小さい酒器が欲しいというから、小さめのを作る」。客との会話を念頭に週2回通う陶芸教室で作陶を続ける。
日光に越して来てからは、創作工房さいがで陶芸を習い15年になる。指導する室町かずえさんは、作風を損なわず釉薬を掛け、電気窯で焼成する。正明さんは土をこね、手ロクロの上で手びねりで器を成形する。乾燥したあと高台作りなど、仕上げの削りまで行う。
釉薬掛けは以前行ったが、手に力が入らないため、掛けることができず、色を指定し室町さんに任せている。
正明さんの制作する器はどれも手に馴染み、ぬくもりあふれるやさしさが魅力の物ばかりだ。
「正明が生きていくうえで楽しいことをさせてあげたい」。弟と妹の手が離れた今年、初めての個展となった。チラシを作り、日光市内の知り合いの店を回った。「快くチラシを貼っていただけて感謝しています。正明もうれしそう」と目頭を赤く染め、母は祈るように話していた。

野田武志
とちぎの作家
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